メルセデスブランドのエントリーモデルである「Aクラス」がフルモデルチェンジした。すでにジュネーブショーで発表されているが、改良したボディと「MBUX」(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)というユーザーインターフェースが新技術として注目されている。先頃、アドリア海に面したのどかなクロアチアのリゾート地で国際試乗会に参加したので、新型Aクラスのインプレッションをレポートする。

  • メルセデス・ベンツの新型「Aクラス」

    メルセデス・ベンツのコンパクトカー「Aクラス」の新型にクロアチアで試乗した(全ての画像:メルセデス・ベンツ日本)

高級車メーカーがコンパクトカーに踏み込んだ理由

そもそも、「Aクラス」とはどんなクルマなのだろうか。高級車メーカーとして知られるメルセデス・ベンツがコンパクトカーの路線に踏み込んだのは1997年頃のこと。ほぼ同じ時期に全長3.6mのAクラスと全長2.6mの「スマート」(2人乗り)を発表した。

初代Aクラスは1993年のフランクフルトモーターショーに出展された「Vision 93 A」の量産モデルだ。メルセデスが「カローラ」クラスのクルマを作るということで日本メーカーも驚いたが、もっとも驚異を感じたのは同じドイツのフォルクスワーゲン(VW)だった。高級車メーカーがコンパクトカーを開発する背景には、どんな考えがあったのだろうか。

  • メルセデス・ベンツの新型「Aクラス」

    なぜ高級車メーカーのメルセデスがコンパクトカーに参入したのか

メルセデスは1980年代に“小ベンツ”と呼ばれた「190E」をリリースした。オイルショックや環境問題などを考えると、大きな高級車だけを作り続けることに限界を感じていたのかもしれない。

米国や英国における自動車の歴史を見ると分かるように、大きな高級車メーカーには恐竜のように絶滅のリスクがつきまとう。環境と安全問題、エネルギーと資源問題などを考え合わせると、大きなクルマだけを作っていては、未来も事業を続けていけるとは限らないのだ。その意味で、高級ブランドのメルセデスではあるが、プレミアムなコンパクトカーを開発することには、30年くらい前からの強い信念があった。