更に大きくなった5ドアハッチバック
1997年に誕生したAクラスは、エンジンを水平15度に寝かせるという発想で、衝突時にエンジンがサンドイッチ構造の床下に落ちることで、そのエネルギー吸収を高めていた。ちなみに、全長2.6mのスマートはエンジンをリヤに搭載していた。Aクラスと同じ考えだったのだ。
今回でAクラスは4代目となるが、3代目からはモノコックボディとなり、全長4mを超えるCセグメントに移行した。メルセデスのラインアップ的には、Bセグメントは「スマート フォーフォー」(4人乗り)、Aセグメントは「スマート フォーツー」(2人乗り)となる。
4代目の新型Aクラスは、先代Aクラスよりも全長が120mm伸びて4,419mmとなっている。幅は+16mm、ホイールベースは+30mmということで、更に立派に見えるようになった5ドアハッチバックだが、来年にはセダンタイプも登場する。先代のプラットフォームを大幅に改良しているが、主な変更点は車体剛性の強化と音振動対策だ。さらに、空力特性も見直して、空気抵抗係数(Cd値)ではクラストップの0.25を実現。速度の高いアウトバーンでは燃費改善に大きく利きそうだ。
「高級車といえばFR」は通用しなくなる
エンジンはルノー・日産製の1.4リッターを大幅改良したものとメルセデスオリジナルの2リッターターボを用意。欧州では1.5リッターのディーゼルが搭載されるが、近い将来にプラグインハイブリッド車(PHEV)が登場することは間違いないだろう。
ギアボックスは7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を使うが、実際に乗ってみると発進時のスムースネスが進化している。2リッターターボの「A250」は、350Nm前後のトルクを発生するかなりの俊足ぶり。1.4リッターターボの「A200」も250Nmのトルクを発揮するので、これでも十分なパフォーマンスだ。
驚いたのはエンジンではなく、Cセグメントとしての完成度の高さと高級感だ。FF(前方にエンジンを積み、前輪で駆動)とは思えないほど、NVH(自動車の乗り心地を測る基準、「N」はノイズ、「V」は振動、「H」はハーシュネス=荒れた路面を走行する際の揺れや音)性能が高かった。
FFはフロントタイヤで駆動するので、サスペンションのブッシュ(サスペンションの連結部に装着する部品、基本はゴム製)などを固くする必要があるし、エンジンの振動もハンドルに伝わりやすい一方で、全長を大きくせずキャビンを広く使えるので、ファミリカー(大衆車)として発展した。それに対し、FR(前方にエンジンを積み、後輪で駆動)は高級車というのが従来の図式だった。だが、メルセデスが20年もかけて開発してきた新型Aクラスは静かでしなやかで、FRかFFか分からないほど、質感の高い走りが実現している。
リヤサスペンションは「A250」がマルチリンクを使うが、17インチタイヤの「A200」にはトーションビームを採用する。その狙いは、すでに述べているようにPHEV対応だ。バッテリーのスペースを確保するのが、その最大の理由。マルチリンクは4MATIC(AWD、四輪駆動)にも対応可能なので、更に高性能な「A45 AMG」の展開も視野に入っているだろう。
ということで、新型AクラスはFFの常識を打ち破るほど静かで乗り心地がよかった。エンジンに関しては可もなく不可もなく、という感じだが、気になるのはPHEVの出来栄え。きっと「EQパワー+」(EQ Power +)の名前で登場するはずだ。