競合ひしめくコンパクトSUV市場

「日本に若者の成功者がそんなにいるのか?」という疑問に関しては、絶対的に自信のある答えは持っていない。アベノミクスが始まってから、金融緩和と財政出動が上手く機能していた2013年は、想定以上のペースでデフレ脱却方向にいったが、翌年の消費税増税がこれまた想定以上で逆に冷や水を浴びせかけることになり、個人消費が落ち込んだ。その後、財政は緊縮気味ではあるものの、景気はなんとか持ち直しの傾向で、雇用統計や給与総額などではかなりいい数値が出てきている。これで2019年の消費増税がなければ、デフレからの好ましい脱却も夢ではないというのが全体の傾向だ。

成功者となると、日本はベンチャーに優しくないのが現状なので生まれにくいのは確かだろう。金利が安い今は大チャンスだが、銀行も斜陽気味なので実績のない者には貸さない状況のようだ。

だから、若くして成功する者が続出するということにあまり期待はできないが、プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUVはそこまで高価ではないので、基本的には順調に売れていきそうだ。エントリー価格は400万円程度で中心が500万円前後。これはDセグメントのセダン、BMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」あたりと同等であり、日本でもそれなりにボリュームがある。ここが食われる可能性はあるだろう。

ただし、ジャンル全体としては大きく成長することが期待できるが、これだけ車種が増えてくると過当競争になるおそれはある。前述の新規3車種以外でも、メルセデス・ベンツ「GLA」は大人気だし、アウディ「Q3」ももうすぐフルモデルチェンジで手強い存在だ。リーズナブルなところではプジョー「3008」なども手が出しやすい。

  • メルセデス・ベンツ「GLA」

    プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUV市場が拡大するのは間違いなさそうだが過当競争のおそれもある(画像はメルセデス・ベンツ「GLA」)

結局のところ勝ち残るには、機能的には優秀な日本車を超える魅力がどれだけあるかどうかに尽きる。

新顔SUV3車種の評価は?

BMW「X2」はハードウェアのクオリティが期待通りに高く、FFながらハンドリングも楽しい。BMWには同セグメントの「X1」があり、そのクーペバージョンでプレミアム度をさらに増した「X2」は本来ならばニッチで販売台数は多くを望めないところだが、想像しているよりも後席の空間がしっかり確保されていて、利便性でのネガは少ない。さらに、クーペとして車体を低くしたおかげで全高は1,550mm以下。つまり、立体駐車場に入るサイズとなっており、これは都市部での購入動機に直結するから意外と人気になりそうだ。

「X2」の発表会ではBMWのブランド・フレンドに就任した香取慎吾さんが登場。若者世代へのアピールのためなのか、今までと違ってなんだかくだけた感じだなと思ったが、乗ってみればBMWらしい骨太なモデルだったことに個人的には安心している。

  • BMW「X2」

    BMWらしく骨太なクルマに仕上がっていた「X2」

ボルボは一昨年からハードウェアもデザインも大幅に進化。中国のジーリーホールディングスの傘下になって資金力を得たことで成功を収めつつあるのだが、「XC40」も気合いが入っている。その昔のボルボといえば、安全ではあるものの、走りには面白みがないイメージが強かったが、今では全く違う。ターボエンジンはパワフルで十二分に速く、シャシー性能もハイクオリティだ。

面白いのは、いたずらにスポーティに振りすぎていないこと。自動車はスポーティとうたった方が全体的にウケがいいので、猫も杓子もそっち方向にいきがちだが、「XC40」は素直でコントローラブル。スポーティに走らせようと思えばきちんとついてくるが、普段はリラックスして走れる特性なのが、日常生活では嬉しい。

  • ボルボ「XC40」

    ボルボ「XC40」は素直でコントローラブルだが、スポーティーに走らせようとすればきちんとついてくる

ジャガー「E-PACE」はそれとは逆で、スポーツカー・ブランドとして只者ではない雰囲気を走りからも放っている。エンジンは高性能であるだけではなく、アクセルをちょっと踏んだだけでもグワッと加速していくような勢いがある。ハンドリングも然りで、ステアリング操作に俊敏に反応。好みは分かれるところかもしれないが、その個性の強さに勝機がある。ちなみに、現在のジャガーはインドのタタの傘下。ボルボもジャガーも、ついでにいえばマツダも元はフォード傘下だったが、リーマンショックでそれぞれ離れてからのほうが、クルマの魅力が増しているのは興味深いところだ。

  • ジャガー「E-PACE」

    ジャガー「E-PACE」はスポーツカーとしての個性を前面に押し出す

結論として、ここであげた新規3車種は、ブランドで1番の販売台数になるぐらいに魅力があり、成功を収めるポテンシャルは間違いなくある。ユーザー年齢層がどれぐらいに収まるかにも注目していきたい。