ユーザーの高齢化に悩む自動車メーカー

ミレニアル世代とは、1980~1990年代に生まれ、2000年代に成人する人たちを指す、主に米国で使われているマーケティング用語で、たしかにプレミアム・ブランドの自動車でも最近は頻繁に使われている。少し前までは「ジェネレーションY」の方がよく耳にしたものだが、そう大きく世代に違いがあるわけではないようだ。

ミレニアル世代はデジタルネイティブであるとともに、リーマンショックで景気が悪いときに育っているなどの特徴があり、消費行動が変わってきているのでマーケティングの世界では大いに研究がなされている。ウインドーショッピングなんて面倒なことはせず、オンラインで買えるならそのまま買い、店頭にいくにしてもネットで調べてシビアに売価を見極め、一目散に決めた店に行くだけ。それ以上に賢いシェアリング・エコノミーへも移行しつつある。それは売る側にとっては脅威でもあるだろう。

米国や欧州、それに日本といった自動車成熟国の自動車メーカーは、常にユーザーの高齢化という課題を抱えている。日本でもだいぶ前から若者のクルマ離れが叫ばれており、トヨタ「クラウン」などは最たるモデル。平均ユーザーは60代超えで、次の次あたりのモデルチェンジでは免許返納の年齢に達してしまうのではないかと戦々恐々としているとも聞く。

  • トヨタ「クラウン コンセプト」

    2018年のフルモデルチェンジを予定するトヨタ「クラウン」でもユーザーは高齢化している(画像は2017年10月の東京モーターショーに展示された「クラウン コンセプト」)

近年ではメルセデス・ベンツが、ユーザーの高齢化に対応するため、コンサバだったイメージから大変革を図った。攻めのデザインにスポーティな走り、それにコンパクトカーのラインアップを充実させて見事に販売台数を増やした。

ユーザーの年齢層を下げることにも成功しているが、それ以上に、従来の高齢なユーザーにもウケがいいのがポイントでもある。今どきの50代、60代は身体が元気なだけではなく気持ちも若く、若者と同じ感覚のモノを求めているのだ。だから、ミレニアル世代がターゲットとは言いつつも、本当のヤングだけではなく「ヤング・アット・ハート」な人たち全般が対象なわけで、Cセグのプレミアム・コンパクトSUV達もそういった売れ方をしていくだろう。

  • ボルボ「XC40」

    ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、「XC40」(画像)でターゲットとする顧客を「ヤング・アット・ハート」な人たちと表現していた

ミレニアル世代に直撃するクルマはあるのか

だいたいにして、ミレニアル世代のハートを鷲づかみにするようなクルマは、まだ現れていないような気がする。デジタルネイティブを意識してコネクテッドなどにも力を入れてはいるが、劇的に何かが変わるほどのインパクトはない。渋滞情報とリンクしたカーナビが賢いとか、周辺の美味しいレストランを案内してくれるなどは、以前からある機能の延長線上。せいぜい新しいのが、同乗者に喜ばれる“クルマのWi-Fiスポット化”あたりだが、日本はSIMの料金が高いので一部に限られる。それだったら、手持ちのスマホやタブレットをきっちり装着できるホルダーが付いているぐらいでもいいのでは? と思ってしまう。

フォルクスワーゲンが「ID BUZZ」のコンセプトカーで見せていたように、「ポケモンGO」的にARを活用し、フロントウインドーの現実風景に矢印などを映しこんだカーナビ機能、あるいはAIロボティクスぐらいまで行くと、ガラリと話が変わってくるだろう。

ただ、ライドシェアの成長をみれば、クルマを買うということ自体が廃れることもありえる。日本では規制があって、まだ守られてはいるが。