2017年4月から1年間放送されてきた『おしゃべりオジサンと怒れる女』(テレビ東京系/ 毎週土曜日23:55〜0:20)は、古舘伊知郎・坂上忍・千原ジュニアという、よそではそれぞれ単独でメインMCを務める“おじさん”が3人集まり、ゲストの女性たちに振り回されたり言い負かされたりする、深夜番組らしい面白さにあふれていた。

2018年4月からは、『おしゃべりオジサンとヤバイ女』(毎週土曜22:30〜23:00)と名前を変え、1時間以上早い時間帯の番組としてリニューアル。これを記念して、出演者の1人である坂上忍にインタビューした。ほかの出演番組に比べて、この番組では彼が著しくリラックスして見える理由はなぜなのか――。

  • 坂上忍

スタジオでやることがない番組

――『バイキング』(フジテレビ)に加えて、この春からはメインMCを務められる番組がさらに増え(TBS系『坂上&指原のつぶれない店』、フジテレビ系『直撃!シンソウ坂上』)、非常に忙しくされていることと思います。そういったほかの番組を拝見してから『おしゃべりオジサン』を観ると、ずいぶん坂上さんの雰囲気が違うように見えるんです。

全然違いますね、はい。

――坂上さんのお仕事の中で、この番組はどういう位置づけなんでしょうか?

簡単に言っちゃうと、理想の番組ですね。僕はいち視聴者としても出演者としても、深い時間の番組が好きなんです。なんでかっていったら、ちょっとルーズになれるから。何より、言葉の規制が少ないのがありがたい。自由度が高いですよね。あとは、この座組だと責任を負う部分が非常に少なくて済む(笑)。

――それは、ホスト側が3人いるから責任が分散されるという意味ですか?

いえいえいえ。スケジュール表を見ていただくとわかりますけど、収録はジュニアが一番最初に局に入って、古舘さんが次に入って、僕が最後にギリギリで入るんです。だからなんの知識もなくやってるんですよ。それでジュニアが進行を担当しながら面白いことを言ってくれて、古舘さんが知識に裏打ちされた話術を披露してくれる。もともと2人のことは天才的な喋りのプロだと思っていたので、僕はスタジオでやることがない。

  • 左から坂上忍、古舘伊知郎、千原ジュニア

――ないことはないと思いますが……。

ない(笑)。この番組に関して僕が勝手に思ってるのは、「責任感を持たないことが自分の責任だ」ってことなんです。終始無責任でいたいな、と。無責任中の無責任なことに、いらっしゃるゲストの方の中には、正直「この人とあんまりしゃべりたくないわ」っていう、苦手なタイプもいるんですよ。でもこの番組はじっくり話を聞くので、「最初は苦手だと思ったけど、この人の中では筋が通ってるのかな」と思えるようになるんです。

凝り固まったものがちょっと氷解

――その点で印象深かったのは、過去のゲストのどなたですか?

かなり初期のほうに出てくれた、水野しずさん。めちゃめちゃ苦手なタイプで。

――放送時も、水野さんが登場してすぐ「苦手なタイプ」と口に出されてましたよね。

はい。でも番組の中で、「この人の中での筋と根拠というものがあって、あんな感じだけど、この人なりに気を遣っているんだな」というのが間近で見られました。苦手な人でも興味を持てるというか、自分が勝手に思っていた、凝り固まったものがちょっと氷解するようなところがあるんですよね。

それと、番組がリニューアルしてから最初に来てくれたキノコの人(きのこライター・堀博美。2018年4月7日放送「古舘・坂上・ジュニアVSキノコに操られる女」に登場)も強烈だったな……。本当に言葉は悪いですけど、「この人、テレビ出て大丈夫なの?」っていう空気を持っている方だったから。

でも、あの人の中にあるのは、キノコのことだけじゃないですか。一個のことを突き詰めるとこんなに話が面白いんだ、って驚きました。僕も何かを掘り下げることは好きだけど、興味があるものをひとつに絞れなくてあのレベルにはなかなかなれないんで、「どうせだったら、気になったものはあれくらい知っておかないとダメだな」ってちょっと反省しちゃいましたね。

――なるほど。失礼ながら坂上さんに対して、『バイキング』などでは「怖い」とか、キツいことを言う人だというイメージがどうしてもあります。女の子を泣かせてしまったりとか。対して『おしゃべりオジサン』では、そういう面がまったく見られないな、と。

お昼の番組では言葉をかわす人たちも同業者ですから、僕のルールの中では「面と向かって言い合っても問題ない」と考えてます。でも一般の方は別。ゲストとして来られた方には、「えっ」っと思っても「とりあえず耳は傾けなきゃ」と。

――その線引きがあるんですね。坂上さんの普段の活動はいわゆるテレビ的・芸能界的な文脈が強いですが、『おしゃべりオジサン』ではブロガーの方がゲストで来たりツイッターネタを扱ったりと、ネット的な文脈のお話がかなり多いですよね。

そう。それは僕がもっとも苦手とする部分なんですよ。でも最終的に、僕は人にしか興味がないと思うんです。人付き合いはものすごく苦手で距離を取っちゃうんですけど、「この人どう考えてるのかな」とか「この人はどういう人なんだろう」っていうのはすごく気になってしまう。

それこそ誰かの小説を買って読んで「おもしろかったな~」ってなったら、勝手に「作者はこんな人なんだろうな」って思う。確かめたいから次も買う。でも今度はそんなに面白くなかった。そこで読むのをやめるのかっていったら、僕の場合は、内容の面白い・面白くないよりも、「1回気になった人だから、ずっと買い続けないとその人がわからない」って考えるしつこさがあります。そういう意味では、もしかしたらこの番組はいちばん向いているのかもしれない。実際に、ヤバい人ほど2回3回って来るから(笑)。