子育てと仕事の両立を考えたとき、出産・育児で会社をどのくらい休むことができるのか、収入はどうなるのか、気になる方は多いのではないでしょうか。安心して出産し、子育てをスタートさせるためにも、出産前に知っておきたい産休・育休の制度やその期間の収入についてお伝えします。
産休・育休はいつからいつまでとれる?
出産後も仕事を続けるために押さえておきたいのは、「いつから会社をお休みできるか」、そして「いつまでに復帰しなければいけないか」だと思います。
おおまかに言うと、会社は出産予定日の6週間前から休むことができます。また、出産後8週間を超えて子どもが1歳になるまでに復帰することが必要になってきます。ただし、保育園に入れないなどの理由があれば、最長で子どもが2歳になるまでお休み期間を延長することが可能です。
会社をお休みしている期間はお給料が出ないことが多いのですが、「出産手当金」「育児休業給付金」といった制度を利用することで、経済的なサポートを得ることもできます。
産休は平均的にいつからとる人が多い?
実際に産休をとった人は、いつから産休をとっているのでしょうか。
マイナビニュースが実施した産休に関するアンケート調査によると、「出産予定日の8週間以上前から」が43.6%と最も多く、次いで「出産予定日の6週間以上~8週間未満から」が25.3%でした(対象:産休取得経験のあるマイナビニュース女性会員116名)。
つまり、出産予定日の6週間以上前から産休をとった人が7割近くいました。一方、「出産予定日の直前から」は15.6%で、出産直前まで働いていた人もいました。
産休とは? 取得期間と条件
産休の取得期間
産休は、産前休業と産後休業の2つからなっています。
産前休業とは、出産予定日が基準となり、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から、会社に申し出ると休める制度です。もし、妊娠経過に問題がなく本人が働きたいと望めば、産前休業をとらずに出産直前まで働けます。
一方、産後休業は、出産の翌日から8週間働くことはできないと労働基準法第65条で定められている制度です。ただし、産後6週間を過ぎている場合、就業を認める医師の許可があれば職場に復帰することもできます。
仮に出産予定日から遅れて出産した場合、予定日から出産当日までの期間は産前休業に含まれますので、安心してください。産前休業が延びたとしても、産後8週間の産後休業は確保されます。出産予定日より早く出産した場合には、産前休業は6週間より短くなります。
産休の取得条件と取得方法
産休は働いている女性であれば、正社員・契約社員・パートなど雇用形態にかかわらず利用できる制度です。例えば、入社後一定の期間がたっていない場合は取れないということもありません。
妊娠していることが分かったら、妊娠中の身体に負担をかけないような仕事内容や勤務形態に変えてもらう必要が出てくるかもしれません。早目に会社に産休を取得する予定であることを申し出て、会社で決められている申請方法を確認し、業務について上司などと相談しましょう。
パート勤務で産休・育休は取得可能? お金はもらえる??
「パートだから、産休・育休は取得できない」。そう思っていませんか? 本記事では、パート勤務の場合、どのような条件で、どのようにすれば、産休・育休が取得できるのかを解説します。
育休とは? 取得期間と条件
育休の取得期間
出産後8週間が経過し産休が終わると、育児休業、いわゆる育休を取ることができます。子どもが1歳の誕生日を迎える前日までの間で希望する期間、育児のために仕事を休めます。
育休は延長できる?
保育園へ入れないときなどは、申請すれば子どもが1歳6カ月まで、さらに申請すると2歳まで延長できます。
また「パパ・ママ育休プラス」制度を活用し、両親がともに育児休業をする場合は、1歳2カ月まで延長されますので、ご自身の状況を確認してみましょう。
育休の延長、いつまでできる? 必要な条件と取得方法
原則として育休を取得できるのは1年間ですが、平成29年10月1日から、最長2年まで期間を延長できることになりました。本記事では、どんな場合に延長することができるのか、延長するためには何が必要なのか、解説します。
育休の取得条件と取得方法
育休を取得するためには、いくつか条件があります。
・1歳に満たない子を養育していること
・日雇い労働者でないこと
・契約社員などの期間雇用社員の場合、申請時に1年以上継続して同じ雇用主に雇用されていること(ただし、子どもが1歳6カ月になるまでに雇用契約終了が明らかである場合は除く)
育休に入る1カ月前までに、育休期間を示し、会社に申し出なければなりません。育休の期間を子どもが1歳6カ月または2歳になるまで延長したい場合は、延長開始予定日の2週間前までに申請しましょう。
育児休暇とは? もらえるお金とお得な制度
本記事では、育児休業給付金や、社会保険料の免除、税金の軽減方法など、育児休暇中にもらえるお金やお得な制度の利用方法をまとめてご紹介します。
産休・育休に伴って受け取れるお金
産休・育休中の従業員に対して、会社は給与を支払う義務がありません 。しかし給与の代わりに、申請すると給付されるお金があります。
出産手当金
会社の健康保険に加入していれば、窓口に申請することで出産手当金が支給されます 。ただし、自治体の国民健康保険に加入している方は、出産手当金がもらえませんので注意しましょう。
支給額は【標準報酬月額1日当たりの金額×2/3×産休の日数分】でおおまかな目安が計算できます。産前・産後休業は、最大で98日、双子以上を出産の場合は154日となっていますので、実際に計算してみてください(出産日が早まったり遅れたりすることで日数は変わります)。
産休中に給与が支給される場合は、出産手当金から給与を差し引いた額となります。したがって、産休中に3分の2以上給与が出る場合、出産手当金は支給されません。
育児休業給付金
育休中には、一定の要件を満たせば、雇用保険から育児休業給付金が支給されます。会社がハローワークへ申請しますが、希望すれば本人が申請することもできます。
支給額の目安は、1カ月あたり【賃金日額×支給日数の67%(育児休業の開始から6カ月経過後は50%)】で計算できます。ただし、上限・下限の額が決められているので注意しましょう(毎年8月に変更あり。令和3年7月31日までは上限額30万5,721円、下限額7万7,220円)。会社が一定額以上の給与を支払った場合は、減額または支払われません。
1歳6カ月や2歳まで育休を延長した場合でも、その期間中の給付金が支給されます。
社会保険料の支払いは免除に
出産手当金・育児休業給付金の支給に加えて、産休中・育休中は健康保険料や厚生年金保険料といった社会保険料が免除されます(免除のためには、「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書」「健康保険・厚生年金保険 育児休業等取得者申出書」の提出が必要ですので、会社に申し出を行いましょう)。
この免除は、保険料を支払ったものとして扱われるため、健康保険・介護保険の給付や将来の年金額が減額される心配はありません。
出産育児一時金
出産費用を補助するため、加入している健康保険から1児につき42万円が支給されます。
出産育児一時金には、医療機関等に直接お金が支払われる「直接支払制度」があるのでぜひ活用しましょう。この制度を利用すれば、出産後に支払う金額は、出産費用から出産育児一時金を引いた差額のみとなります。
妊婦検診費の助成
妊婦健康診査の費用は、全額自己負担となるものですが、各自治体では、検査費用の一部を助成する制度を実施しています。自治体に妊娠届を提出すると、妊婦健康診査の受診票が交付されますので、病院や医院の受付に事前に提出して妊婦健診を受けましょう。
高額療養費
高額療養費制度とは、同一月(1日から末日まで)にかかった医療費の自己負担額が高額 になった場合に申請することで、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が払い戻される制度です。帝王切開や吸引分娩など健康保険が適用される医療費は、高額療養費の対象となることがあります。
医療費控除
妊娠・出産に関わる医療費は、出産育児一時金を差し引いても多くかかる場合があります。医療費は世帯での合計額を申告することができますので、家族の医療費(交通費なども含む)の領収書もまとめて保管しておきましょう(医療保険の給付金があれば、この分は該当する医療費から差し引く必要があります)。確定申告で医療費控除をすることで、税金が戻ってきます。
産休・育休中にボーナスはもらえる?
産休・育休中にボーナスの支給日が設定されている場合、ボーナスを受け取ることはできるのでしょうか? また、出産手当金などの受給額には影響しないのでしょうか? 本記事では、産休・育休中のボーナスについて解説します。
産休・育休を取得する際、気を付けたいこと
会社経由での手続きが多くありますから、特に育休を取りたい方は、産休に入る前からあらかじめ必要な書類や手順を担当部署に確認し、用意しておきましょう。会社で産休・育休を取った方がいる場合には、どうすれば出産の報告や手続きをスムーズに進められるか聞いておくと安心です。
会社側は、妊娠・出産、産休・育休を取得したことで解雇や配置転換の強要をすることを禁じられています。上司・同僚は、女性の働く環境を害することがないようにしなければなりません。
もしお休みの取得を断られたり、理不尽な対応をされたりした場合には、これらの制度の利用が働く女性の権利であることを説明しましょう。それでも状況が変わらない場合には、会社の所在地がある都道府県の労働局雇用環境・均等部(室)に相談してみましょう。
妊娠・出産は体力的にも大変な面があります。賢く制度を利用できるように、できるだけ早いうちから夫婦で話し合えるといいですね。
オフィスFP Lino 代表/理系出身の元エンジニアで2児のママ。結婚後、家計管理や資産運用などで行き詰まり、ファイナンシャルプランナーの資格を取得。夫の転勤のため正社員を退職。徳島と大阪で子育てをしながらママ向けにお金の情報を発信中。マネー講座・働き方や仕事と家庭の両立に悩む女性の個別相談を中心に活動し、お金の面からママや女性が『自分らしいライフスタイル』をつくるサポートをしている。ホームページ「ママと女性のお金と人生設計」を運営。2級FP技能士/マイライフエフピー認定ライター