育児休業を2年取得、収入・出費はどれだけ変わる?

現在、最長1年半まで取得できる育児休業。報道などによれば、2018年春までに、最長2年に延長される見込みです。子どもの預け先が見つかる前に、育休期間が終わってしまい、離職してしまうママを救済することが主な狙いのようですが、もし、育休を2年取得した場合、家計にはどのような影響があるのでしょうか。

育休2年の制度導入で何が変わる?

育児休業の期間は会社から給与が支払われないことが多いのですが、その間、生活を支えてくれるのが「育児休業給付金」です。雇用保険から支給されるもので、通常は赤ちゃんが1歳になるまで、事情によっては1歳6カ月になるまでもらえます。

これまでも、会社によっては、2年、3年と育休を取得することが可能でした。しかし、今回の制度変更のポイントは、「育児休業給付金がもらえる子どもの上限年齢」が1歳6カ月までから2年までに延長されたという点です。

育休2年が役立つ例

待機児童が課題となっている地域では、例えば8月に出産した場合、子どもが1歳になる翌年の8月に保育園に入ることは、年度途中になるため、難しいのが現状です。育休を最長の1年半に延長しても、職場復帰は3月。最も入りやすい4月入園を目指すことは、困難になります。これまでは、こういった事情から、職場復帰を諦めざるを得ないママもいました。

しかし、育休が最長2年となることで、給付金をもらいながら、4月入園を目指すことが可能となります。保育園がみつからず、仕事を諦めていたママたちにとっては、大きな助けとなるでしょう。

育児休業給付金はいくらもらえるの?

それでは、実際に育児休業給付金はいくらもらえるのでしょうか。主な内容は以下となります。

・育児休業開始から180日目(6カ月目)まで: 月給の67%
・育児休業開始から181日目以降(6カ月以降): 月給の50%

受給は2カ月ごと、月給は休業開始前6カ月の平均額とし、残業代は含みますが、ボーナスは含みません。現在検討されている内容では、延長された1年6カ月以降分の給付金額も、月給の50%となる見込みです。

育休1年と2年で、収入はどれだけ変わる?

育休期間が延長され、安心して職場復帰できる一方で、中には育休の期間、家計の収入が減ることに不安を抱えてしまうご家庭もあると思います。実際に、家庭への影響はどれだけあるのか、気になるところですよね。そこで、育休を1年で終了し復帰するケースと、育休を2年取得し復帰するケースとを、家計の面から比較してみました。今回は、育休前と復帰後の年収が400万円の妻と、500万円の夫を目安に、概算します。

育休1年後に職場復帰して年収400万円の仕事をした場合の手取り収入は、育休を最長2年延長した場合の育児休業給付金の給付額の約2倍

子どもが1歳から2歳になるまでの収入を比較すると、育休1年では復帰後の給与の手取り約344万円が収入となりますが、育休2年では、給付金である約174万円が収入となります。この期間で考えると、育休2年の収入は、育休1年の約半分、という結果になりました※。

※モデルケースの計算方法
・月給は28.5万円として計算
・妻の手取り収入は、生命保険料控除4万円、社会保険料控除、基礎控除、所得税を差し引いた金額。住民税は育休前の所得で算出となり同額のため、考慮なしで計算
・社会保険料は、協会けんぽ(大阪)、40歳未満で算出

育休1年、家計の落とし穴

ただ、職場復帰する場合、家計の面からさらに考えなければいけないのが、保育料です。保育料の算出は、保護者の市町村税の所得割の合計額をベースにしていて、自治体によって異なりますが、例えば、月平均5万円であれば、年間60万円の支出になります。また、2人目、3人目で保育料が軽減される自治体も多くあります。

ですので、これらの知識を基本に、ママ・パパの住民税額が分かる資料を参照しながら、保育料を具体的に確認していきましょう。保育料以外にも、保護者会の会費、制服など、諸費用がかかる保育園もあります。

さらに、子どもが1歳未満で職場復帰をし、短時間勤務をした場合、収入が減ることもあります。短時間勤務の給与についても、職場で確認しましょう。

制度改正によるママ・パパの負担減

育休を2年に延長することによって、育児の負担が女性ばかりに偏るという意見もあります。しかし現状として、地域によっては、4月入園を目指さなければ、保育園に入ることができず、仕事を続けることを諦めたり、育児に専念したい育休中に「保活」に労力を割かれてしまう現状があります。

「保育園に入れないかもしれない」「保育園に入れなければ、仕事を辞めないといけない」という不安は、子育て中のママ・パパにとって大きなストレス。今回の制度改正により得られる「保育園に入れなければ、育休を延期できる安心感」は、子育て中のママ・パパの負担軽減となるでしょう。

※写真はイメージで本文とは関係ありません

著者プロフィール

マイライフエフピー代表 加藤葉子
子育て真っ最中のファイナンシャルプランナー。子どもを授かったことをきっかけに、教育費や学資保険の仕組みなどに興味を持ち、ファイナンシャルプランナーの勉強を始め、3年で子どもの教育資金を貯める。現在は、全国の女性からの教育費・老後資金・起業・離婚・投資なのお金の相談を中心に執筆・マネー講師として活動しながら、ファイナンシャルプランナーの育成にも力を入れている。自身のホームページ「女性とシングルマザーのお金の専門家」でもお金にまつわるお役立ち情報を提供している。