原則として育休を取得できるのは1年間ですが、平成29年10月1日から、最長2年まで期間を延長できることになりました。どんな場合に延長することができるのか、延長するためには何が必要なのか、解説します。

  • 育休を延長するために必要なこと

育休とは

育休(育休休業)とは、会社に申し出ることで取得できる、子育てをするための休業を指します。原則、子ども1人につき1回。期間は、子どもが1歳になる誕生日の前日までの連続した期間で、出産日・産後休業を含めて1年間です。専業主婦家庭の夫も、取得することができます。

育休中は、最初の6カ月に給料のおよそ2/3、それ以降は給料のおよそ半分の額の育児休業給付金が支給されます。会社によっては、子どもが3歳になるまで休暇を取得できるなど、法律を上回る制度を設けているところもありますが、法律で決められた期間以上のお休みは、育児休業給付金の給付対象外です。

いつまで延長できる? 必要な条件は??

育休の延長期限

会社に「育休の延長をしたい」と伝え、延長の条件を満たしたとき、子どもが2歳になる誕生日の前日まで、期間を延長することができます。子どもが1歳を迎えるときに1歳6カ月を迎える前日までの延長、1歳6カ月を迎えるときに2歳になる誕生日の前日までの再延長を申し出ることになります。

  • 育児休業期間のイメージ(執筆者作成)

延長するための条件

延長の条件は、パパかママのどちらかが、子どもが1歳になる誕生日の前日(再延長の場合は、1歳6カ月になる前日)に、育休を取得している状態であること。まず、ここを押さえておきましょう。その上で、以下のどちらかに当てはまるとき、会社に延長を申し出ることができます。

・子どもが認可保育所等に入所できないとき
・子どもを育てる予定だった人が、病気・ケガ・妊娠などさまざまな理由で、子どもを育てることが難しくなったとき

ただし、雇用契約期間に定めがある場合、申し出の時点で、同じ会社に1年以上勤めていることが必要です。その上で、最初の延長時は子どもが1歳6カ月を迎える前日、再延長時は子どもが2歳になる誕生日の前日までに、雇用契約(更新される場合は更新後の契約)の期間が満了しないことが条件となっています。

育休延長に必要な手続き

育休の延長は、自動的にされません。延長開始の2週間前までに、会社へ「育休の延長をしたい」と伝え、延長に必要な申請書類を確認しましょう。書類に不備があれば給付金が出ないこともありますから、できれば事前に必要書類がなにかを調べておくことをお勧めします。スムーズに手続きを進められるように準備や心構えをしておけば、いざ延長となったとき安心です。

また、育児休業給付金の支給も、子どもが2歳になる誕生日の前々日まで延長できます。手続きは、延長時と再延長時に、それぞれ行います。必要書類は「育児休業給付金支給申請書」と「延長事由に該当することを確認できる書類」です。

延長事由に該当することを確認できる書類
・保育所に入れないとき→「自治体が発行した証明書類」
・子どもを育てる予定の人が亡くなったり、離婚などの事情で子どもと一緒にすまなくなったりしたとき→「世帯全員について記載された住民票の写し及び母子健康手帳」
・子どもを育てる予定だった人が、病気などで子どもを育てることが難しくなったとき→「子どもを育てる予定だった人の状態についての医師の診断書等」
・次の子どもが生まれる予定や、産後間もないとき→「母子健康手帳」

支給申請は、ハローワークが指定した支給申請期間内に会社が行います。申請期限が過ぎたことにより給付を受けられなかった場合でも、時効である2年以内であれば、支給申請が可能です。

社会保険料も引き続き免除になります。延長が決まったら、「育児休業等取得者申出書」の手続きを会社にしてもらいましょう。

共働き世帯限定の延長方法も

パパもママも育休を取得することによって、子どもが1歳2カ月を迎えるまで、育休期間を延長できる「パパ・ママ育休プラス」という制度もあります。

  • 共働き限定「パパ・ママ育休プラス制度」(執筆者作成)

子どもが1歳になる前日以前に配偶者の育休が開始していること。そして、制度を利用する本人の育休は、配偶者の育休の初日以降に開始することが条件です。

育休期間は1年2カ月に延びますが、パパとママがそれぞれお休みできる期間は変わらず、出産日・産後休業を含み1年間です。

この制度の適用を受けた後も、保育所に入ることができないなどの理由で、延長の条件を満たしたときは、子どもが2歳になる誕生日の前日まで、延長を申し出ることができます。

育休延長、得すること・損すること

得すること

所得が減ることで配偶者控除や配偶者特別控除の対象となり、配偶者(多くは夫)が負担する所得税や住民税の金額が減る可能性があります。住民税が減った場合には、保育園の料金も安くなるケースがあるので確認してみましょう。

また、育休を延長しても、育児休業給付金は継続して給付され、社会保険料は免除されます。育児休業給付金に対する所得税や住民税はありませんから、税負担に関しても心配がありませんね。

損すること

育休を延長することで、家計の収入アップは見込めませんし、職場復帰に不安を抱えるケースもあるでしょう。

ただし、子育てに専念しつつ、もしキャリアアップのために勉強ができたら、長い目で見ると、家計にとってはプラスになるかもしれません。かわいいわが子と一緒に過ごせる時間が増え、成長を側で見守ることができる喜びはきっと大きいはず。夫婦で協力しあって、育休ライフを楽しんでくださいね。

※写真と本文は関係ありません