子どもの卒業式に入学式、歯医者にも行きたいし、たまには旅行にだって行きたい。そんなときに使いたいのが「有給休暇」制度。「ゆうきゅう」と略す人も多いでしょう。そこで今回は、「有給休暇」の正しい略語について調べてみました。

  • 有休と有給の違い

「有休」と「有給」の違い

「来週、『ゆうきゅう』を取らせていただきたいのですが」と、口頭で申し出る分には何ら問題はありません。ただ、メールで申請する際や、出張中の同僚にメモで伝えたいときなど、実際に文字で書くとなると「有給」と書くか「有休」とどっちを使うべきか、迷う人も多いのではないでしょうか。

有給休暇の略語という点においては、「有休」と「有給」に明確な違いはありません。「有休」は有給休暇の略であり、「有給」は有給休暇の略であると同時に「給料があること」という意味も持ちます。

ここで有給休暇の制度について確認してみましょう。

有給休暇とは

正式には「年次有給休暇」と言います。一定期間継続して働いている労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、取得しても給料が減ることはありません。

厚生労働省は、労働基準法第39条に則り、「年次有給休暇」について以下のとおり企業に義務付けています。

・使用者は、労働者が(1)6カ月間継続勤務し、(2)その6カ月間の全労働日の8割以上を出勤した場合は、10日(継続または分割)の有給休暇を与えなければなりらない。

・6カ月の継続勤務以降は、継続勤務1年ごとに1日ずつ、継続勤務3年6カ月以降は2日ずつを増加した日数(最高20日)を与えなければならない。

出典
「労働基準法」第三十九条(年次有給休暇)

また、辞書には「労働者が人間らしく生きるために、休日以外に、権利として有給で休暇をとることができる制度」「労働者に毎年一定日数の休暇を有給で付与する制度」と記載されています。

  • 有休と有給どっち?

有給休暇はパートにも適用されるのか

ちなみに有給休暇は、以下の条件を満たせばアルバイトやパートで働く人たちにも適用されます。

(1)雇われた日から、6カ月間継続で勤務している
(2)その労働期間内において、契約上の全労働日の8割以上出勤している

上述の「労働基準法」第39条と全く同じ条件であることがわかります。

有給と有休、どっちが正しいのか

この「有給」と「有休」、漢字の使われ方としてどちらが正しいのかという疑問においては、結論として「どちらも正しい」と言えます。ただ、「有休」の方を正しいとする見解の方が多く見られています。

「有休」が正しいとする根拠の一つは、「有休」は有給休暇の略語でしかないのに対し、「有給」は「給料の支給があること」を意味する単独の言葉として辞書に掲載されていることにあります。

上述のように、辞書にも有給休暇について「有給で休暇をとることができる制度」「休暇を有給で付与する制度」と記されています。そのため、「有給」と書いた場合、「給料が有ること」という意味でとらえられかねません。

もう一つの根拠は、他の休暇制度の略語にあります。産前産後休暇は「産休」、育児休暇は「育休」、病気休暇は「病休」。いずれも、「先頭の文字+休」という構成になっています。これにならえば、有給休暇は「有休」と略すことになるのです。

「有給」は間違い?

前項で述べた理由からすれば、「有休」の方が優勢ではあるものの、現状、テレビや新聞といったメディアでも「有給」の略語も使われています。

また、書いた文字が「有休」でも「有給」でも、口頭で言われたときと同じ感覚で、大抵の人がごく自然に「有給休暇」と認識するはずです。

会社によっては、「有給」の方を主流としているところもあるようです。こうした状況を踏まえると、「有給」と略すのが間違いだとは言いきれません。


一般的には、「有給」と「有休」、どちらも有給休暇の略語であることは明確ですが、「『有給を取りたい』ってどういう意味?」なんて揚げ足を取る人も稀にいるかもしれません。文字にする際には、略さずに「有給休暇」と書くことをお勧めします。