『72時間ホンネテレビ』や『亀田興毅に勝ったら1000万円』などインパクトあるバラエティ番組で注目を集めるインターネットテレビ局・AbemaTVが満を持して、完全オリジナル連続ドラマを制作。今年1月より第1弾『#声だけ天使』(毎週月曜22:00~/全10話)を配信中だ。

総製作費3億円以上をかけ、オーディションで選ばれた俳優の亀田侑樹が主演を務める同作は、『スーパー歌舞伎IIワンピース』などの舞台やドラマを手掛ける横内謙介氏が脚本を書き下ろし。アニメの聖地である東京・池袋を舞台に、声優に憧れ上京してきた主人公・ケンゾウと同じ志を持つ4人の仲間の、友情と純愛、挫折と希望の青春群像劇を尾形竜太監督が描く。

完全オリジナル連続ドラマ第1弾でAbemaTVが伝えたいこととは、そして、第1弾でこのストーリーにした理由とは。このたび藤田晋社長と、脚本を手掛けた横内氏にインタビュー。藤田氏は、一番の目的は「こういうレベルでAbemaTVオリジナルドラマを作るという方向性を示すこと」と語り、実際にクリエイターたちから同局で自分の作品を作りたいという人が増えたと手ごたえ。「狙い通り」「大満足」と胸を張る。

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    藤田晋社長(右)と脚本家の横内謙介氏 撮影:蔦野裕

脚本を第一に考えたドラマ作り

――はじめに、完全オリジナルドラマを作ろうと思った狙いを教えてください。

藤田 :Netflixが『ハウス・オブ・カード』でブレイクしたのを知っていたので、AbemaTVでもオリジナルドラマを当てたいという思いがあった。ただ、力がついていない段階で始めても面白くないものになってしまうので、1年経ってようやく始めました。もともとインターネットテレビは、テレビを見なくなった若い世代が主役。その世代が見たいと思うものを作ろうと思いました。

――"完全オリジナル"ということを強く打ち出されているなと感じました。

藤田 :原作があるドラマの制作も考えましたが、そういう切り口は地上波がたくさん手がけていて、人気の出た小説や漫画はすぐに着手されるので、そこで競っても意味がないし勝ち目がないと思い、オリジナルで勝負することにしました。

――脚本を第一に考えるドラマ作りをされたそうですね。

藤田 :幻冬舎の見城(徹)社長にもらった『定年後の韓国ドラマ』という本に、韓国はドラマ大国でダメなものはすぐ打ち切りになる。日本のようなキャスティングから入る作り方は一切せず、本物の脚本だけが生き残る世界で、だからこそ出来が良くて面白い作品が多く、みんながハマると書かれていました。その影響を受け、まず素晴らしい脚本を作ってからキャスティングを進めていくやり方にしました。

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横内謙介氏に脚本を託した理由

――その大事な脚本を横内さんにお願いした経緯を教えてください。

藤田 :僕の中で最初から頭にあったのが、自分が二十歳くらいのときに見たフジテレビドラマ『あすなろ白書』(1993年)。一人ひとりの出演者がすごく愛おしく感じられるドラマ作りでとても感動移入でき、また、自分たちの世代がメインで、恋愛、友情、夢が描かれている。そういったものを作りたいと思いました。そして、僕が今まで見た舞台の中で一番よかったものの一つである横内さんの『つか版・忠臣蔵』にはその要素があり、かつ、横内さんは僕が親しくさせていただいている幻冬舎の見城社長と深い関係で、このルートで頼んだら一生懸命やってくれるだろうということも計算の上でお願いしました(笑)

横内:外堀を埋められている感じがあって、逃げ場はなかったですね(笑)

藤田 :実績が出てくるとやる気になってくれる人は多いと思うんですが、第1弾はやはりプレッシャーがかかるような状況を作らないといい作品はできないので(笑)

――横内さんはこの話を聞いたときどう思いましたか?

横内:光栄に思いましたが、テレビドラマをわかっているわけではないので、自信を持つ根拠もない。ただ、面白いものを作ろうというのは芝居もドラマも同じなのでやってみようと思いました。

――ちなみに、尾形竜太監督はどのような経緯でお願いすることになったのでしょうか。

藤田 :青春群像劇をきれいな映像で撮れる人を探していた時に、周防正行監督から「絶対間違いない人」ということで尾形監督を紹介してもらいました。周防監督からの紹介ということで、これもまたいい仕事をしなきゃという環境を使わせてもらった(笑)。とにかく一番の目的は「こういう質の高いレベルでAbemaTVオリジナルドラマを作るよ」という方向性を示すこと。結果的にそれが見事体現化できて僕としては大満足です。