素晴らしい展望台からの眺望
野島公園展望台からの眺望は、素晴らしいの一言に尽きる。東側を見れば、遠くには房総半島、眼下には日産自動車の追浜工場が広がっている。現在、工場内の自動車のテストコースになっている辺りに、かつて追浜飛行場の滑走路があったという。
南側には横須賀方面の景色が広がり、三浦半島の最高峰・大楠山(おおぐすやま 標高242m)なども見える。西側には鎌倉方面の景色が広がり、日によっては富士山も姿を現す。
金沢八景とのからみで重要なのは、北側の景色だ。シーサイドラインの線路が右にカーブする、その向こうの山の麓に見えるのが称名寺の屋根だ。『称名晩鐘』には、海に浮かぶ小舟の上で、子連れの母親が夕空に響き渡る称名寺の鐘の音に静かに手を合わせる様子が描かれている。広重の浮世絵では称名寺は山の中腹に建っているが、実際には山の麓にあることが分かる。
また、称名寺からやや右に目を移すと、「海の公園」の砂浜が広がっている。『乙艫帰帆』は、あの辺りの風景が描かれているのだそうだ。
このほか野島公園内には、明治期の海浜別荘建築である「旧伊藤博文金沢別邸」や、戦時中に戦闘機を空襲から守るために掘られた野島の掩体壕(えんたいごう) の遺構などがあるので、見学をオススメしたい。野島公園からシーサイドラインの野島公園駅までは、徒歩4~5分ほどだ。
さて、これで金沢八景のうち、7カ所を巡ったことになる。残るは雨の絵の名作である『小泉夜雨』だが、この絵の舞台となったのは、通説では金沢文庫駅から徒歩15分ほどの釜利谷の手子神社の付近とされる。
だが、この場所は他の7カ所から離れている上に、周辺の景観の変化が激しいので、もし時間に余裕があるなら訪れてみるくらいでいいだろう。むしろ、さきほど展望台から見えた称名寺の境内には美しい浄土式庭園があるので、こちらを訪れた方が、観光という意味では楽しいかもしれない。
金沢八景巡りは、現地の案内板や道標があまり充実していないので、ガイドさんと歩いて正解だった。ガイドは、参加人数が1~5人の場合は2,500円、6人以上の場合は、ひとりあたり500円追加でお願いできる。なお、予約はツアー実施日の1カ月くらい前までにしてほしいとのことだ。
●information
横濱金澤シティガイド協会
住所: 神奈川県横浜市金沢区瀬戸19-31-205
受付日: 火~土曜日10:00~16:00(ガイドの実施は日曜・月曜も可能)
幻想的な夜のシーパラへ
昼間の散歩を楽しんだ後、夜は「横浜・八景島シーパラダイス」に移動しよう。シーパラダイスに最寄りのシーサイドライン八景島駅までは、野島公園駅から3駅5分ほどだ。シーパラダイスでは現在、夜を舞台にした幻想的な世界「SEAPARA NOCTURNAL ISLAND 2017-18」を開催している。
特に面白いと思ったのが、体験型イルミネーションだ。屋外に設置された"ポッド"の上に乗って身体を動かすことで、水族館アクアミュージアムの三角の大屋根に映し出されたプロジェクション映像のキャラクターが、動きに連動して反応するのを楽しめる。
アクアミュージアムの中に入ると待ち受けているのは、高さ8mの巨大空間に設置された、ストリングカーテンに映し出される360度3Dプロジェクションマッピング「水の大樹」。"生命の誕生の起源、生命の爆発"を表現したプログラムを楽しんだ後、ここから水族館内の生きものたちを眺めながら動線を進むと、イルカたちによるナイトショー「The Color of Love ~幸せを呼ぶイルカ~」の会場にたどり着く。
このナイトショーは2017年春から始まったもので、客席前面の大型LEDビジョンを中心に、壁面全体に映像が映し出され、多彩な光の中でイルカたちが物語を紡ぐ、見応えのあるものだ。生命や愛に関する様々なメッセージが込められており、ファミリーだけでなく、カップルや大人も楽しめる内容になっている。
●information
横浜・八景島シーパラダイス
住所: 神奈川県横浜市金沢区八景島
※「SEAPARA NOCTURNAL ISLAND 2017-18」は2月28日まで開催
お土産には絶品スィートポテトを
金沢八景巡りのお土産は、金沢文庫駅から徒歩10分ほどの場所にある和菓子処「菊月」のスィートポテト「かねさわ一番ポテト」(税別180円)などはいかがだろうか。このお菓子は、「平成24年度 ガチでうまい横浜の商店街あまいものNO.1決定戦」で銅賞を獲得。しっとりとした舌触りと、サツマイモの上品な甘さが際立つ逸品だ。
さて、金沢八景周辺散歩はいかがだっただろうか。一年中いつ歩いても楽しめる散歩コースだが、展望台から富士山が眺められ、冬限定のイルミネーションも楽しめる、冬の間に一度訪れてみてはいかがだろうか。
※記事中の歌川広重の浮世絵の画像は、全て神奈川県立金沢文庫より借用
筆者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)
慶應義塾大学卒。IT企業に勤務し、政府系システムの開発等に携わった後、コラムニストに転身し、メディアへ旅行・観光、地域経済の動向などに関する記事を寄稿している。現在、大磯町観光協会理事、鎌倉ペンクラブ会員、温泉ソムリエ、オールアバウト公式国内旅行ガイド。2017年秋には、NHK『ごごナマ』に「紅葉」のゲスト講師として出演。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。