スケールメリットを追いつつブランドで生き残るために

従来の自動車メーカー間の合従連衡は、日本車でいうとトヨタ連合とルノー・日産・三菱連合に単独のホンダ、トラックではダイムラー傘下の三菱ふそうにボルボ傘下のUDトラックスと、12社ブランドの色分けがある程度、整理されていた観があった。

スケールメリットを追うという観点で見た場合の合従連衡は、トヨタ連合がスバル、マツダ、スズキもあわせると現行で世界1,800万台の規模となる。ルノー・日産は、三菱自を加えるとほぼ1,000万台で2022年には1,400万台を狙う。これに拮抗するのは、フォルクスワーゲン(VW)グループとGMグループだろう。

  • スズキの鈴木俊宏社長

    スズキが加わると、トヨタ連合の販売台数は世界最大の1,800万台規模となる(画像はスズキ「スペーシア」の発表会に出席した鈴木俊宏社長)

ダイムラーやBMWは、台数規模よりもブランドのプレミアム化(差別化)を追う方向であり、PSAプジョー・シトロエンはプレミアム化を進める一方で、オペルやマレーシア・プロトンを買収し、ルノー・日産連合に対抗する動きも見せる。

つまり、完成車メーカーとしてはスケールメリット(量産・量販によるコスト削減)を享受しつつ、そのブランド力を持ってどう生き残りを図るかが焦点となるのである。

電動化が参入障壁を下げた? 異業種も虎視眈々の自動車産業

一方で、イノベーション(技術革新)のスピードは早まる中、電機業界や通信業界、素材業界、半導体業界から自動車業界に参入した新興勢力が、手を組む相手を選ぶという流れも進んでいる。また、中国やインドなどの新興国では地場メーカーも台頭してきている。

2017年には、米国のEVベンチャー・テスラが一時、GMやフォードの時価総額を上回ったことも話題になった。テスラはパナソニックと電池製造で合弁工場「ギガファクトリー」を立ち上げている。現在は解消したが、テスラは以前、トヨタと提携していた事実もある。

  • トヨタの豊田社長とパナソニックの津賀社長

    トヨタと車載用角型電池で手を組んだパナソニックは、テスラと米国で電池の合弁工場を立ち上げている間柄でもある

EVには、英国のダイソンが参入を表明し、日本でもヤマダ電機が手を挙げるなど2017年に新たな動きが出た。また、モーターの日本電産がM&A戦略に加えPSAとの提携に乗り出している。

2018年において注目すべきは、電動化・知能化・情報化のイノベーションが進む流れの中で、従来の枠組みと異なる仲間づくりがあらゆる形で具現化しそうなことだろう。

また、もう1つ注視しなければはらないのはメガサプライヤーの動向だ。すでに欧州では、ボッシュやコンチネンタルといった企業が、この自動車イノベーションの流れに乗り、逆支配体制、つまりは技術支配力を高めているのだ。

自動車世界販売は、2018年も前年を上回って9,600万台半ばまで伸びると予測される。2020年代の世界1億台時代に向けて、各社・各国でイノベーションへの対応を急務として進める勢力が林立し、中国やインドなどは国策として自動車産業を育成すべく施策を打ち出している。こういった事情を背景とし、2018年は協業と競争が異次元の合従連衡をさらに明確にさせる気配である。