現在、熱い注目を受けている、手ブレ補正付きの「防振双眼鏡」。ライブや観劇などで使用する人たちが、よりコンテンツを楽しむために買い求めている。中でも人気を誇っていたキヤノンの防振双眼鏡に、新製品「10×32 IS」「12×32 IS」「14×32 IS」が出るということで、大きな話題を呼んだ。

今回はキヤノンICB光学事業部 商品企画担当の家塚さんと、島田さんに、新製品のポイントを伺っていく。

  • 左から島田さん、家塚さん

ワンプッシュ式を採用

――今回はどういった経緯で開発が進んだのですか?

島田:防振双眼鏡は比較的手頃な価格帯のものと高価格帯の間に隔たりがありましたので、その中間にくるバランスの取れた製品を、と開発を進めました。

  • 製品ラインナップ

光学的な見えは重視しつつ、手振れ補正の強みはさらに活かした製品開発をしたいというところで、今回新しく出したものは1回押せば防振機能がそのまま5分間効き続けるワンプッシュ式。さらにパワードISという機能をつけています。

パワードISは、弊社のビデオカメラやコンパクトデジカメにも入っている機能です。見る対象が一点にとどまって動かない場合にしっかりと手ブレが止まるモードです。相手が動く場合には、従来の手ブレ補正の方がよく、今回の新製品では、手ブレ補正の利かせ方がボタンで選べるようになっています。

――今までの、ボタンを押している間のみ防振機能が働くという仕様は、バードウォッチングを想定されていたんですか?

家塚:そうですね。それほど長い間同じ鳥や動物を見ていることはないでしょうし、「押している間だけ手ブレ補正」の方が、電池が長持ちして良いと思ったのです。主に星を見る方向けの高価格のものでは、「ワンプッシュで数分間防振」というタイプもありますが。ただ最近だと、ライブなどは公演中かなり長時間にわたり見たいという話も聞いたので、そういう方にとってはワンプッシュ式の方がいいのかなと思い、採用しました。

今回のもうひとつのポイントは、グリップしやすい形になったことです。真ん中がくぼんでいて2つの筒がある形になってます。これまでの弊社の防振双眼鏡は手ブレ補正方式の構造上、真ん中がくぼんだ形が作りにくかったのです。

  • 手前が新製品。持ってみると違いがよくわかる

しかし今回は手ブレ補正にシフト方式を採用し、グリップしやすい形になりました。このシフト方式は、カメラの手ブレ補正のレンズと同じ方式です。双眼鏡にもカメラ用レンズと同様にレンズが何枚も入っていますが、その中の一部を手ブレに合わせて上下左右にシフトするように動かし、光が目の中に入るときには手ブレが止まっているというものです。

手ブレ補正のコントロールが左右でほんのちょっとでもずれていると、見ているうちに頭が痛くなることがあります。そういうことがないように作ってありますのでご安心ください。

  • シフト方式

島田:シフト方式は省電力にもなりますので、今回の技術的な進化は非常に大きかったです。従来と比べると、新製品の方がスペック上は大きいんですけど、ずっと握っているということを考えると、こちらの方が快適だと思います。