(20)世界遺産の温泉は「温泉津温泉」
銀山からおよそ20km離れた港町、温泉津も「石見銀山遺跡とその文化的景観」の構成資産として世界遺産に登録されています。おおよそ銀山と関係のなさそうな港町が、なぜ世界遺産に登録されたのか? それは銀山で掘り出した銀を、この温泉津の港から世界へと輸出していたからなんです。
積み出し港として栄えた温泉津には、その名の通り温泉があり、多くの人々を惹きつけました。現在も港のある温泉街として、大森地区とは違った伝統的な町の景観が保たれています。ちなみに、「温泉津」と書いて「ゆのつ」と読みます。
(21)たぬきがいっぱいの温泉津
この温泉津の町を散策していると、やけにたぬきの置物が目に付きます。それもそのはず、ここ温泉津はおよそ1,300年前に、たぬきが温泉で傷を癒やしているのを発見され温泉が開かれたと伝わる、たぬきの町。軒先や瓦の上、看板に市営バスまで(!)たぬき尽くしなんです。何頭のたぬきと出会えるか、数えながら温泉街をぶらぶらしてみては。
(22)江戸っ子とたぬきは熱い湯が好き!?
そんな温泉津のたぬきが浸かったと言われる湯に今も入ることができます。「元湯」は、温泉津を代表する温泉のひとつ。源泉をそのまま使用しており、薬効豊かな湯を楽しめます。見るからに伝統的な趣きのある温泉で、シャワーも風呂イスもないという潔さ。スーパー銭湯に慣れた現代人に、「これが温泉ってもんよ」と教えてくれる湯です。
そしていざ入湯してみると……熱い! ゆっくりとしか湯に入っていけないほどの熱さです。3つある浴槽は温度別になっているとのことですが、どれも熱い! 熱い方が約45℃、ぬるい方が約41℃とのこと。ヒーヒー言いながら上がると、肌は真っ赤に。しかし、身体が冷めてくると、また入りたくなってくる不思議な魅力があります。
●information
元湯
島根県大田市温泉津町温泉津口208-1
(23)石見神楽を見るなら温泉津で
島根県のこの地域は、神楽が盛んなことでも知られています。激しく舞う囃子を特徴とする石見神楽は、地域の人々の宝です。この神楽に魅せられて移住してくる人もいるほどの人気で、市民の娯楽として地域に定着しているそう。
温泉津では、龍御前神社で毎週土曜日の20時に定期公演が行われています。今回、残念ながら生の公演を観ることはできなかったのですが、昼の龍御前神社に立ち寄ると、3歳の男の子がひとりで神楽を舞っているところに遭遇しました。一緒にいた保護者の方いわく、「家で見たビデオに感化されて踊ってる」とのこと。伝統芸能が、市民の暮らしにしっかりと根付いていることを感じさせる出会いでした。
●information
龍御前神社
島根県大田市温泉津町温泉津ロ156
※夜神楽は毎週土曜日に開催
(24)地酒は酒蔵で買う
温泉津が誇る酒造が「若林酒造」です。その銘柄である「開春」は、この地域の人々に長年親しまれてきた温泉津の味。温泉を楽しんだ後、地元の酒と魚で一杯やるというのはたまらない楽しみ方ではないでしょうか。オリジナルのお猪口はお土産にも◎。
●information
若林酒造
島根県大田市温泉津町小浜ロ73
(25)「もうひとつの石見銀山」で銀山観光を極める!
ここまで、世界遺産としての石見銀山をじっくりと見てきました。さらにこの地を深く探求したい人には、もうひとつの銀山観光をオススメします。島根の銀山というと石見銀山が注目されますが、実は他エリアにも銀山はあり、多くの銀や鉱物を産出していたのでした。島根県邑南町の「久喜・大林銀山」は16世紀の中ごろには本格的に開発されていた銀山で、銀のほか鉛の産出量が多かったと言われています。
精錬所跡には「からみ」と呼ばれる、銀や鉛の精錬過程で廃棄される不純金属が大量に打ち捨てられていて、壮観です。足元に転がっている石ころの一つひとつが、銀を作るための産業廃棄物だと思うと、地形を変えるほどのその膨大な数に、圧倒されます。
見どころが分かりづらいと言われる産業遺産も、こうして現地に行くと見て感じるものが必ずあります。久喜・大林銀山は石見銀山からクルマで1時間強と近くはありませんが、「もうひとつの石見銀山」として訪れる価値のある場所です。
間歩の暗さと寒さに心もとなくなったり、温泉の熱さにうなったり、四季折々の山の美しさ(秋は紅葉シーズン!)を楽しんだり、地域の暮らしを全国に発信する雑貨&カフェでゆっくりしたり、この地で受け継がれる神楽に日本の伝統的な大衆芸術をみたり、田舎町だからこそ映える大正レトロ建築を愛でたり、地元の人から気持ちのいいあいさつをされたり。世界遺産の石見銀山を訪れると、昔からの人間の営みに触れる機会がたくさんあります。いつもより歩みをゆっくりと、散策してみませんか?
世界遺産データ
『石見銀山遺跡とその文化的景観』。文化遺産。2007年登録。2010年範囲拡大。日本、島根県
地図
筆者プロフィール: 小俣 雄風太(おまたゆうた)
「世界遺産検定」事務局の編集広報部員。自転車ロードレースに魅せられ本場フランスに一年留学。その後イギリスのサイクリングアパレルブランドで広報を務め、世界各地で自転車に乗るうちに世界遺産を強く意識するようになる。検定を通じて世界遺産の魅力と意義を広めたいと奮闘中。
世界遺産検定とは?
世界遺産の背景にある歴史、文化、自然等の理解を深め、学んだことを社会に還元していくことを目指した検定。有名な観光地のほとんどは世界遺産になっているため、旅の知識としても役立つと幅広い世代に人気。
主催: 世界遺産アカデミー
開催月: 3月・7月・9月・12月(年4回)
開催地: 全国主要都市
受検料: 4級3,000円、3級4,500円、2級5,500円、1級9,700円、マイスター1万9,000円、3・4級併願7,300円、2・3級併願9,500円
解答形式: マークシート(マイスターのみ論述)
申し込み方法: インターネット又は郵便局での申し込み
その他詳細は世界遺産検定公式WEBサイトにて。
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