(10)日本でもレアな木造の小学校がある
大森地区から石見銀山へは約2kmの道のり。普通に歩くと長い距離ですが、ガイドさんの説明を聞きながらだと、銀山までの道端にもたくさんの歴史とエピソードが詰まっていて飽きることがありません。大森地区から数百m離れたところにある大森小学校も、そのひとつ。国内でも珍しい現役の木造校舎で、訪れた平日午前には子どもたちの声が教室から聞こえてきました。
石見銀山を擁する島根県大田市も過疎化による人口減に直面する中で、この人口400人ほどの大森地区の人口は微減に留まり、むしろ幼稚園には園児が増えているとのこと。小さな木造の小学校はこれからますます活気づいてくるはずです。
(11)途中の道がたまらなくキレイ
大森地区から石見銀山までは、森林の中を歩くとても気持ちのいい道です。全て舗装されているので、レンタサイクルで駆け上がるのもいいですが、ガイドさんの説明を聞きながらちょっと道草をしつつ進むのがオススメ。
鉱山業に従事した多くの人を供養するために付近には古いお寺も多く、また清水谷精錬所跡などの遺跡もあっていよいよ銀鉱山へと気持ちが高まります。こうした寄り道には、自然の豊かさを感じることができ、何気ない美しさを実感します。それこそが、自然と共存した『石見銀山遺跡とその文化的景観』の特徴。秋には紅葉、冬には積雪でまた表情が変わるそうです。
(12)間歩はそこらじゅうにある
銀山観光のハイライトとなるのが、間歩(まぶ)探索。間歩とは鉱石を掘るための坑道のこと。石見銀山では早くから「龍源寺間歩」を観光用に整備し、公開しています。しかし、間歩は大小含めると無数にあって、世界遺産登録された10年前から今日まで発見が続いています。
「龍源寺間歩」までの沿道にも、間歩をいくつも見つけることができます。こんな狭いところから坑道に入っていったとは……。ちなみに世界遺産登録される前、間歩が体系的な調査をされる前は、近隣の住人は冷蔵庫代わりに近くの間歩を利用していたそうです(笑)。
(13)猫好きも楽しめる世界遺産
「龍源寺間歩」までの道のりには猫がたくさん。世界遺産(に暮らしている)猫と散策ついでに戯れてみては。
(14)定番の龍源寺間歩で先人の営みを思う
石見銀山を観光する上で、欠かせないのが龍源寺間歩の散策。江戸時代に手で掘り進んだとはにわかに信じ難い規模をもつ坑道内は、ちょっとした探検気分。少し掘り試しては、銀が出ないため中断された坑道跡が、内部に幾筋も残っています。壁面に生々しく残るのみの跡は、銀を追って奥へ奥へと入っていった先人の執念を感じさせます。
(15)ヘビノネゴザで一攫千金!?
こうして銀鉱山の営みに触れていると、そもそもどうしてこの地に銀があると分かったのか、そんな疑問が生じてきます。戦国時代末期に石見銀山を「発見」したのは、山師の安原備中守と言われていて、「観音様のお告げによって」発見したとのこと。その真偽はともかくとして、鉱脈があるかどうかを見分けるひとつの目安にヘビノネゴザがあります。備中もこれを参照したのではないか、とはガイドさんの言。
重金属を含む土壌でも生育できるシダ植物のヘビノネゴザは、他の植物が自生できない鉱床で独占的に生育します。つまり、ヘビノネゴザが群生しているところには、鉱脈のある可能性が高いということになります。ここ石見銀山でも間歩の付近を中心に、多くのヘビノネゴザを見ることができます。ヘビノネゴザの群生地を見つけることができれば、一攫千金も夢ではない……かもしれません。
(16)登録10周年を記念! 新公開の間歩
そして2017年、石見銀山遺跡で最大級の間歩である「大久保間歩」に要注目のスポットが新たに加わりました。実はこれまで、予約ガイドツアー限定で公開されていた知る人ぞ知る間歩だったのですが、今年の世界遺産登録10周年を記念して公開範囲を拡大。「福石場」と呼ばれる巨大空間へ、新たに入れるようになりました。
この地を治めた代官の大久保長安が、馬に乗ったまま入ったためその名がついたとの逸話に、大きさのほどがうかがえる大久保間歩。舗装路で入り口まで歩けた龍源寺間歩とは違い、大久保間歩は山の中腹にあり、若干の登山を経て入り口に到達します。内部は今も水が滴り、ヘルメットと長靴、懐中電灯を携えての入坑です。中は真っ暗! そして、キンと冷え切っています。気分は川口浩探検隊。
真っ暗闇の中で懐中電灯を照らすと、思いの外頭上が高いことに気づきます。これは江戸時代に手掘りで形成された間歩を、明治時代の再開発でさらに拡張したため。明治期には火薬を用い爆破によって坑道を広げていったそう。
よく壁面を見てみると、ある一定の高さより上は凹凸の少ない滑らかな表面をしているのに対し、下側はごつごつと表面の角が立っています。上部が手でのみを振るった江戸時代、下部が火薬で爆破した明治時代です。手作業の方がキレイな表面だというのは、少し意外な気がします。
そして、間歩を突き進むこと最深部。これまで以上に大きな空間が広がります。ここが世界遺産登録10周年を記念して今年新しく公開された「福石場」。広大なスケール感に、ここから掘り出され世界へと輸出されていった銀の壮大な物語が重なります。
17世紀の世界経済を動かしたダイナミズムを、暗闇の中で思う時、石見銀山の世界遺産としての価値が感じられるはずです。2017年の大久保間歩のツアーは11月30日まで、金土日祝日のみ開催。2018年は3月の金土日祝日開催から再開します。
●information
大久保間歩一般公開限定ツアー
(17)大久保間歩のミクロな楽しみ方
大久保間歩では足元にご注意を! もちろん暗がりで転ばないためでもありますが、実は足元にも大久保間歩ならではの見どころが。水溜りに懐中電灯をかざすと、なにやら小さな白いものが動くのが見えるはず。大久保間歩にしかいないというチョウセンメクラヨコエビです。暗闇に生息するため、目が退化し体の色素もないという特異な生き物。こんなところにも独自の生態系が息づいているんです。
(18)山に溶け込む釜屋間歩
大久保間歩からまた少し山を登ると、趣の違う間歩にぶつかります。こちらは釜屋間歩。入場はできないですが、草に覆われているそのたたずまいに、「自然と共存した鉱山」という石見銀山のキャッチフレーズがしっくりきます。備中が見つけたというこの間歩の入り口には、今も多くのヘビノネゴザが生えています。
(19)世界遺産は銀山だけじゃない
石見銀山の観光といったら、通常ここまで見てきた間歩がメイン。しかし、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の世界遺産としての価値は、ただ銀山だけにあらず。山を登って、坑道を歩くだけではもったいない! 次のページでは、世界遺産の温泉(!)や街道、さらには世界遺産ではないけれど近隣の観光スポットを紹介します。









