日本産高級車に興亡盛衰の歴史あり

トヨタのクラウンは、「いつかはクラウン」のキャッチだったように日本のモータリゼーション進展期における上級者志向の象徴だった。しかし、1955年の初代モデルから来年夏に投入される新型クラウンが15代目となるように、フルモデルチェンジを重ねる流れのなかで、その位置づけも変わってきている。

フルモデルチェンジを重ね、クラウンの位置づけも変わってきた

クラウンのライバルは、かつて日産自動車の「セドリック」だった。日本自動車産業をリードし、ライバル関係にあったトヨタと日産の高級車を代表するのが、クラウンでありセドリックだったのだ。これに三菱自動車の「デボネア」やホンダの「レジェンド」といった日本の高級車が並ぶ時代もあった。日産セドリックは後継の「フーガ」に代わったし、「丸の内カー」と呼ばれ、三菱グループ役員車として丸の内周辺で多く走っていたこともあったデボネアも、今や消滅した。

トヨタは「レクサス」、日産は「インフィニティ」、ホンダは「アキュラ」の高級車ブランドを立ち上げ、北米での展開から一時は日本でも販売網展開を構想したが、具現化させたのはトヨタだけで、日産、ホンダは断念している。日本車各社としては、欧州・米国の自動車産業に追いつき、追い越すべく、この高級車分野にも挑戦してきた。そんな中、米国メーカーの減退で北米での高級車ブランドは一定の成果を収めたのである。一方で、トヨタはレクサスとともに、トヨタブランドのセダン訴求として先に新型「カムリ」を投入している。

トヨタがセダン復権の思いを託した新型「カムリ」

しかし、欧州市場や世界の高級車市場では、なかなか欧州勢、特にドイツの高級車ブランドに太刀打ちできないという流れがあった。メルセデス・ベンツ、BMW、アウディのいわゆる御三家である。それでもレクサスは、「おもてなし」などのブランド力形成でドイツ勢への対抗力を強めている。

世界最大の自動車市場に次期クラウンも挑戦

クラウンはこれまで、日本のドメスティック高級車としての位置づけであったが、すでに12代目クラウンの2003年から、中国のトヨタ合弁「第一汽車」で現地生産・供給を開始しており、その後も継続している。

次期クラウンは中国で存在感を発揮できるか

来年夏に国内投入される次期クラウンも、中国での現地生産が予定される。もちろん、日本市場における高級車クラウンがトヨタの挑戦ではあるが、日本の高級車としてあるべき姿を追求し、輸入車対抗や若者層の獲得も狙おうとするなら、グローバルでもプレゼンスの向上を図っていくべきであろう。

すでにクラウンも、国内では8割がハイブリッド車である。次期クラウンは、コネクティッドに加えPHV(プラグインハイブリッド車)投入も含め、世界最大の中国市場にチャレンジする可能性があるのだ。