三菱自動車工業(以下、三菱自)が3カ年の中期経営計画「DRIVE FOR GROWTH」を発表した。グローバル販売130万台、売上高2.5兆円という目標は、2016年度比でいずれも30%以上の増加となる野心的な数字だ。この期間中にフリーキャッシュフローは黒字化するとし、コスト管理の徹底を図ることで効率的かつ規律ある業務体系の構築を目指すという。

東京都港区にある三菱自の本社

土台づくりの3年間

この新しい中期経営計画は、三菱自が燃費データ不正問題を契機に日産自動車の傘下に入ってから約1年が経過する中で、ルノー・日産連合の一員として、立ち位置をしっかりと固めるための土台づくりとなる。

つまり、過去のリコール隠しから燃費データ不正に至るブランド失墜を受けて、三菱自は真の信頼回復に向けて歩き出すことになる。組織改革を実行し、企業文化を変貌させることで、同社の強みを生かした成長と、ルノー・日産・三菱自連合の枠組みを確立させるため、第1ステップとして大きな意味を持つのが同計画だ。その成否が、三菱自の生き残りを占うことになると言っても過言ではない。

三菱自の益子修CEOも、新計画の発表で「完全に信頼を回復させることがこの中計3年間を通じて第一の優先経営課題だ」と強調した。そして、3つのポイントとして「信頼の早期回復、業績のV字回復、3カ年の新車投入を成功させる」ことを挙げた。

中期経営計画の発表会に登壇した三菱自動車の益子修CEO

電動化技術・SUV・アセアン市場に強み

すでにカルロス・ゴーン3社連合会長が、2017年9月にフランス・パリで2022年までのアライアンスとしての中計を発表している。三菱自の会長も兼務するゴーン氏は、3社連合で2022年には2016年比40%増のグローバル販売1,400万台を達成し、世界トップとしての地位を確立するとの野望を明確に示した。

また、3社連合で12車種の電気自動車(EV)を投入するとし、この分野におけるリーダーの座を意識する一方で、プラットフォーム(車台)の共通化を拡大する方向性を示し、ルノー・日産連合に三菱自を入れたロゴも明示することにより、三菱自の強みであるプラグインハイブリッド車(PHV)およびSUVの商品力とアセアン戦略を連合に組み込むことへの期待をにじませた。

アライアンスのロゴ

ゴーン氏の発表を受けて、ルノーはすでに中期経営計画を発表済み。日産も当初は10月16日に発表予定だったが、無資格従業員の完成検査問題が発覚したことで延期となった。三菱自の中計は、3社連合の6カ年計画に対し、信頼回復の優先課題もあるため、まずは3カ年で連合中計と擦り合わせる土台づくりを狙うことになる。