燃費不正発覚から1年が経過した三菱自動車工業。日産自動車の傘下に入ったことで社内改革が進み、V字回復を達成できるのではとの観測が浮上する一方で、プロパー社員のモチベーションなど、気になる部分もある。改革から真の再生へと進む道筋を、三菱自は見つけることができるのだろうか。

社内改革を進める三菱自は“生きる道”を見つけられるか

日産出身の副社長が指揮をとる社内改革

三菱自は4月13日、「燃費不正問題を受けた社内改革の進捗について」と題した山下光彦副社長による記者会見を行なった。

ちょうど1年前の4月に軽自動車燃費データ改ざんという不正が明るみに出たことで、三菱自の信用失墜は経営の屋台骨を揺るがす事態となった。苦境に陥った三菱自が提携先に求めたのが日産だった。昨年5月の連休明けに電撃的な両社の資本提携が発表され、日産が34%出資することで三菱自は日産傘下入りすることになった。

今回の社内改革の進捗についての記者会見で山下副社長は、淡々と再発防止への取組み、全員参加型のパフォーマンス・レボリューション活動の推進、プロダクト・エグゼクティブ(PX)制度の見直しなどの組織変更が具体化されてきていることを説明した。

山下副社長は、日産との資本提携発表により昨年6月に日産技術顧問から三菱自に送り込まれた人物。日産時代は約10年にわたってゴーン日産で開発責任の副社長を務めた。三菱自の開発部門を中心とする改革のリーダーとして、ゴーン氏が直々に任命したというわけだ。実際、2016年7月1日付けで山下副社長は、新たに発足した三菱自の「事業構造改革室」のリーダーとなり、社内改革の責任者を務めている。

開発・品質担当のチーフ・プランニング・オフィサー(CPLO)を務める山下副社長

業界初の測定データ処理自動化システム導入

三菱自の燃費不正問題について5項目でまとめると、(1)法規で定められた惰行法によらない走行抵抗の測定、(2)走行抵抗の恣意的な改ざんおよび机上計算、(3)eKワゴン/eK スペースに関する走行抵抗の恣意的な算出と引き下げ、(4)不正発覚後の走行抵抗再測定の際にも、測定方法の趣旨に反する取り扱い、(5)1~2に対して自浄作用が働かず、1991年から25年にわたり是正できず、という状況だ。三菱自の体質に起因する根深い問題だった。

このため、再発防止策がまず第一にあげられるが、これについては仕組み、組織、風土・人事、経営レベルの関与のあり方から、合わせて31項目の再発防止に取組んでいる。特に注目されたのは、走行抵抗の測定データ処理自動化システムの導入である。これは業界初の試みであり、自動化システムにより改ざんの余地がなくなるということである。