『ザ・ノンフィクション』の改革

そんな張江氏は、NHKで『クローズアップ現代』や『NHKスペシャル』を制作し、文化庁芸術祭やカナダ・バンフテレビ祭など、数々の受賞歴を持つエースディレクターだったが、フジテレビへ中途で12年前に入社。「NHKはやっぱり自分が作りたいものを作るんですよ。でも、視聴者にいかに見てもらうかという競争の中で、自分の力を確かめてみたいと思ったんです」と振り返る。

『ザ・ノンフィクション』を担当したのは3年前からだが、当時は視聴率が低迷。そこで、「時間をかけて『いい番組ですね』と評価されてはいたんですけど、時間をかけすぎることで時代の空気とかけ離れている企画が出ていたと反省し、視聴者が何を求めているのかということを相当意識するようにしました」と改革に乗り出した。

具体的には「日曜の午後2時の大票田であるF3(女性50歳以上)を取り戻そうということで女性目線のネタに徹底して、昨年は同時間帯で1位になりました」と成果が。そこから視聴習慣がつき、現在は「今回のようなある種の"冒険"もして、社会的なテーマを考えていく企画を散りばめています。ただ、今何を求められているのかということは、四六時中考えていますね」と余念がない。

フジテレビ復活へ報道・情報番組も汗を

最近、フジテレビでは、東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(1988~89年)の宮崎勤元死刑囚の取り調べでの肉声や、今年暗殺された金正男氏の生前最後の映像、そして今回の北九州連続監禁殺人事件犯人の息子へのインタビューと、報道・情報部門でスクープを連発している。

その背景について、張江氏は「とにかくフジテレビの再生を図るには、ドラマとバラエティの復活はもちろんであるが、一方で報道と情報でどれだけ自分たちが汗をかいたものを見せられるかということで、信頼を回復していくしかないだろうという話をよくしてます」と説明。

「報道局でスクープがあれば、われわれ情報制作局も『頑張らなきゃ!』ってなるし、情報が頑張れば、報道も『次は俺たちだ!』って刺激になる」と、相乗効果による"フジテレビ復活"へ力を込めた。