バトンタッチ会より

――ビルドのデザインがオーソドックスな仮面ライダー像を意識している理由などはありますか。その一方で、有機物と無機物の融合という目新しい要素が加わっているところも見逃せません。

『エグゼイド』はビジュアルの面で、いろんなことを言われ続けた1年だったので、「じゃあ仮面ライダーっぽくしましょうよ」というのは企画チームの口からも出てきていて、それはそうですねと。もちろん『エグゼイド』がなければあのビジュアルにはなっていないと思っていますし、『エグゼイド』があったからこそ、確固としてみんな「これでいこう!」となれたはずです。さっきの橋渡しの部分でも「やっと仮面ライダーきたよ」という、待っていた人の期待に応えられたというのは大きいと思うので、あれはあれで正解だったなと。

無機物・有機物に関しては、『エグゼイド』ではゲームというモチーフを決めて、そこだけはちゃんと決めて走っていた部分だったのですが、それが「商品を売るための番組でしょ」と見えなくもない。もちろん、それは商品を買う人たちにとってはプラスに働いていると思うんですけど、単純に作品自体を見たい、ドラマを見たいという人たちにとっては邪魔する部分も少なからずあると思います。だから商品展開の速度を落とすという意味で、モチーフを今回用意しなかったというのが大きいですね。

最近の「仮面ライダー」は、劇中に登場するアイテム数が増えてきてしまったことによってモチーフが必要になっちゃったというところがあります。そんなデザインのよりどころとしてのモチーフを今回はどうしてもやりたくないということで、出てきたのが有機物と無機物の掛け合わせでした。これは別に僕から提案したわけではなくて、自然な流れとして出てきた感じです。おそらく有機物と無機物というイメージ自体がすごく「仮面ライダー」的な発想だから、ということだと思うんですけどね。

それはとにかくモチーフではないし、仮面ライダーが戦う時にそれがツールやデバイスとして使うにとどめられるので、ドラマには影響を与えない。完全に商品展開とドラマを切り分けた考え方のもとに進めたという感じです。あとは僕の考えが本当に追いついていなかったので……(笑)、もうそのころは『エグゼイド』にかかりっきりで、ドラマを考えられるレベルに達していなかった。あとでちゃんとドラマを作るために、ドラマに関与しないような商品展開にしたという感じでしたね。

――脚本・武藤将吾さん、音楽・川井憲次さんを起用されたポイントとは。

これは今回テレビ朝日の井上(千尋)さんというプロデューサーに新しく入っていただいているんですけど、井上さんとのやりとりで決まってきたことが大きいですね。とりあえず新しい番組をやらなきゃいけないということで、脚本家さんを何人かリサーチしていたんですけど、その中に武藤さんの名前もあって、ただまあゴールデンのシリーズ構成を担当されるような方だし、特撮の経験のある方でもないので無理だろうなと。

それが、井上さんのほうから「武藤さんがやりたがっています」ということを急に言われたので、「じゃあ話したいです」とお願いをして、それからけっこうすぐに会って、そうしたら武藤さんも「仮面ライダーをやりたい」ということをけっこう熱っぽく語っていただきました。

『エグゼイド』でもう流れもできているし、「平成ライダー」19作というアニバーサリー作品でもなくあまり縛りがない……みたいなことも予想して、武藤さんにやっていただくタイミングとしては絶好のタイミングなんじゃないかというふうに思いました。

川井さんも、井上さんから名前を出していただいたり、あとはパイロットを撮っていただいた田崎竜太さんもドラマ『科捜研の女』で一緒にやったりしている方だっので、いいんじゃないって。

――今回ある程度キャリアのある俳優を起用した意図はどんなところにあるのでしょう。

『エグゼイド』の時はどんな役者さんが来ても『医者』という記号がありました。例え新人のキャストになったとしても魅了できるような企画を用意しなきゃいけないと思って、『医者』という記号と、『ゲーム』という派手な世界観の融合というガワから企画っぽいものにしたということなんです。

一方で、今回の『ビルド』はドラマから入っています。そして武藤さんが書いてきた会話が、キャラクターが生き生きとしているというか、芝居で二倍にも三倍にもおもしろくなるような書き方なので、この芝居を芝居経験が全くないキャストで組み立てるのは難しい……という印象だったんですね。これは初稿を読んだ段階です。これはちゃんと経験あるキャストをそろえないと見てもらえないなという感じがありました。

武藤さん自身も、「またあの戦兎と龍我という二人を見たくなる、会いたくなるというような一年にしたい」とおっしゃっていたので、特にあの二人をちゃんと頼れるヤツら、楽しいヤツらとして、「二人の掛け合いがまた見たいと思ってもらえるように成立させないとこの企画は失敗する」という意気込みでした。キャスティングも二人ともこの人しかいないという感じで決まりましたね。

――仮面ライダーは当て書きではなくて、脚本があってそこからキャストを決めていく感じなんですね。

オーディションは同時に進めているんですけど、それを表現できる新人の方はなかなかいないので、本当にあの二人がいてくれてよかったですよね。