ユーザーに不安感

実は、9月29日に今回の問題が明るみに出て、国交省での日産会見があった後、友人から筆者にこんな電話があった。「9月に日産『セレナ・ハイウェイスター』の購入契約をして、10月上旬に納車の予定なんだけど。セレナはカーオブザイヤーを受賞したし、プロパイロットの自動運転機能に関心があってあえて高いグレードにしたんだけど、今回の話はどうなんだろう?キャンセルしたほうがいいのかな?」

自動車業界を長くウォッチしてきた筆者にこんな相談があったのだが、「まあ、車両の安全・品質に問題があるとは思えないので、販売会社の担当者にじっくり聞いて、しっかり対応させることだな」と答えておいたのが週末のやりとりだった。このように、消費者・ユーザーサイドからは、早くも日産への信頼感が薄らぎ、不安感が出ているのだ。

国内販売は巻き返しの途上

日産といえば昨年春、三菱自動車の燃費不正問題を契機に同社に資本参加し、傘下に収めた。「ルノー・日産・三菱自」連合の総帥としてグローバル覇権を狙うカルロス・ゴーン氏にとって、日産はアライアンス戦略の総仕上げにおいて中核となる自動車メーカーである。

言うまでもなく、ゴーン政権でV字回復を果たした後も日産ではゴーン長期政権が続き、今年4月に西川体制に切り替わったばかりである。ゴーン日産におけるグローバル戦略は成長したが、一方で日本国内販売においては低迷を続けていた。

かつて、国内市場ではトヨタ自動車と同社を追う日産が「T・N」両大手と言われたが、最近の日産の国内販売は、トヨタ、ホンダ、ダイハツ工業、スズキに次ぐ5位の座に甘んじてきた。

昨年秋に投入された新型「セレナ」は、日産として2年半ぶりとなる日本国内市場の新型車であった。その後は「ノートe-POWER」に続き、新型EV「リーフ」と久しぶりに国内における商品力強化を展開し、日本市場での巻き返しが進んでいた。

国内販売は巻き返しの途上で、新型「リーフ」(画像)も発売となった日産

国内工場は日産本体と子会社である日産九州および日産車体の6工場体制だが、ゴーン氏が「国内生産100万台の維持」の号令をかけても、国内販売の低迷で工場によっては稼働率が大きく低下していたこともある。ここへきて、新型車が好評で一気にフル生産に入っている工場もあるが、今回の問題は、工場での士気やコンプライアンスへの意識の緩みが根底にあったのではないか。