伊勢名物「赤福餅」は、今や全国にファンを持つ超有名菓子。現地の店舗ではもちろん、各地の物産展など手に入れることができる機会は多いが、作りたてを楽しめるのは伊勢市内に立地する赤福本店と直営店のみ。さらに本店には、元旦を除く毎月1日限定で販売される「朔日(ついたち)餅」なるスペシャルメニューも存在するが、こちらはなかなかありつくことが難しいという。
伊勢神宮の参拝客のために作られた朔日餅
朔日餅が誕生したのは昭和53(1978)年のこと。その名の通り毎月一日に販売される餅だが、なぜ日にちを限定しているかというと、伊勢神宮に朔日参りに訪れたお客をおもてなしするために作られたものだから。
「朔日参り」とは、毎月はじめの日に神社に参拝して、前月の1か月を無事に過ごせたことを感謝し、これから始まる月の無病息災や商売繁盛などを祈念する慣わしであるが、特に伊勢神宮ではこの日に参拝するお客が多いという。
参拝帰りには赤福本店に立ち寄り、ひと息つくことを恒例としているお客も多数。普段より早起きして御参りするお客をおもてなしするうち、「毎月赤福餅では申し訳ない。なにか季節を感じていただけるような餅菓子を用意させていただこう」と思い立ったのだそう。
そうして作られたラインナップは、「2月=立春大吉餅(りっしゅんだいきちもち)、3月=よもぎ餅、4月=さくら餅、5月=かしわ餅、6月=麦手餅(むぎてもち)、7月=竹流し、8月=八朔粟餅(はっさくあわもち)、9月=萩の餅、10月=栗餅、11月=ゑびす餅、12月=雪餅」と名前も見た目も季節感いっぱい。
また、2月の「立春大吉餅」に節分に撒く大豆が使われているのを筆頭に、それぞれの朔日餅に込められた想いに目を向けると感慨深さもひとしお。
3月のよもぎ餅は桃の節句にちなんだ餅菓子だが、古来よりよもぎは魔除草とされており、子孫繁栄や無病息災を願っていただくものである。そして4月のさくら餅は、新しい年度の始まりを象徴するかのよう。
かしわ餅(2個税込210円) |
5月には、端午の節句にちなんで子々孫々の繁栄を祈るかしわ餅が登場。麦刈りの季節である6月には、豊作感謝のお祝いのために作られた麦手餅を楽しむことができる。
続く7月に販売されるのは、猛暑の時期にうれしい涼やかな見た目の竹流し。そして8月には、旧暦八月朔日(ついたち)である「八朔」が、「八朔参宮」と呼ばれており、米や粟のお初穂を神前にお供えして豊穣を祈る風習があったことから、八朔粟餅がお目見えする。
さらに9月には、収穫の喜びを祝って萩の餅を販売。10月には、重陽の節句で栗飯や栗菓子を食べて不老長寿を祈ったことにちなみ、栗餅をお披露目する。
そして「ゑびす講」のある11月には、商いの神様にちなんだ「ゑびす餅」でお客の商売繁盛と開運招福を祈念し、12月には冬景色と相性のいい雪餅を用意。
6時半~7時で売り切れることも!
すべての朔日餅は、本店およびEXPASA御在所上り赤福茶屋にて食べることができる他、お土産として購入もできる。ちなみにお土産用の箱は、月ごとのイメージにぴったりな伊勢千代紙に包まれているので、家族や友だちにプレゼントしても喜ばれること必至。
ただし、販売日には長蛇の列ができるそうで、「朝4時45分の開店ですが、人気商品の月ですと6時半から7時頃に売り切れることもあります。おおむね午前中には売り切れますね」とのこと。どうしても食べてみたい商品の場合、3時30分に配布される整理券の入手が必要かもしれない。
ちなみに、特に人気の商品を尋ねたところ、「7月の竹流し、8月の八朔粟餅、10月の栗餅ですね」との回答。この月を狙う場合は、前日から伊勢に乗り込んで早起きするか、もしくは逆に徹夜で朔日餅入手に挑むのもありかも。
「毎月一日、伊勢の早朝はすがすがしく、そして面白いですよ」と赤福スタッフも太鼓判の朔日参り、ぜひ一度は体験してみては?