エアバスは現地時間の6月20日、6月19~25日にパリ郊外のル・ブルジェ空港で開催中のパリ・エアショーにて、パランティア・テクノロジーズと協同で、新しい航空データプラットフォームの「スカイワイズ」(Skywise)をローンチしたことを発表。現在、世界の航空会社の数社がすでにスカイワイズの初期導入社として運用を開始しており、LCCのPeach Aviationもその1社となる。

現在、Peachを始めとした世界の航空会社の数社が、すでにスカイワイズの初期導入社として運用を開始している

パランティア・テクノロジーズはビッグデータの統合と最先端分析における専門会社。スカイワイズは、あらゆる主要な航空産業関連会社が、個々の運用能力とビジネス成果を改善し、それぞれのデジタル改革をサポートするために利用する単一の情報プラットフォームになることを目的としている。スカイワイズはすでに、エアバスの製造において運用能力の改善や、性能強化した航空機や部品設計、より高いサポートサービスの提供を実現しているという。

スカイワイズは全てのユーザーに、航空業界の多様なデータソースから航空データまで合わせて、ひとつの確実なクラウドベースのプラットフォームに取り込み、それぞれの豊富なデータへの単一のアクセスポイントを提供する。これら航空会社のデータソースには、作業指示書、スペアパーツ消費、部品データ、運航機体仕様、搭載センサーデータ、フライトスケジュールのデータがある。

エアバスと従来から共有され、独立したサーバーでのみ運用されている追加のデータソースもプラットフォームに統合され、航空会社が利用可能なあらゆる種類のデータをもとに分析を行い決定を下す手助けとなる。この共有データソースの内容は、運航中断履歴、部品交換、ポストフライトレポート、パイロットレポート、機体状況監視レポート、完全な機体搭載データ、技術書類、技術要請、サービスブリテン(SB)などとなる。

スカイワイズによる航空会社のビジネスモデル形成およびサポートの例として、予測予防的な整備による機体の運航信頼性を向上、経年機の運航効率性を向上、運航中に発生した問題に対する迅速な原因分析、フライトオペレーションデータ分析による機体性能の最適化、長期の整備効果の追跡、規制機関への複雑なレポートなどワンクリックで実行、などを想定している。

スカイワイズは、航空会社が利用可能なあらゆる種類のデータをもとに分析を行い決定を下す手助けとなる

エアバスの豊富な航空宇宙専門知識とパランティアのデータプラットフォームの展開ノウハウを組み合わせることによって、スカイワイズはエンドユーザーがそれぞれ自身のデータから新たな見識を得る力を提供する。さらに、航空会社およびその他航空関係ステークホルダーは、OEMの専門知識と世界の航空会社の機体状況データへアクセスすることにより、それぞれの運用能力を強化することができるという。

具体的には、飛行停止の削減、予防整備による整備コストの削減、フライトオペレーションの最適化、客室および地上運用の改革、予期せぬ出来事に対処する迅速な決断力、大規模保有機とフライトオペレーションデータ活用によるフリート管理の最適化などを想定。これらは、たとえデータが古い情報システム上に蓄積されていたとしても可能という。

スカイワイズを利用することでエアバス機のオペレーターは、エアバスのエンジニア2万人分もの蓄積知識を活用できることになる。さらに、エアライン側の運航、整備、機体データを、安全でオープンなプラットフォーム上でエアバスのデータや世界基準データと統合することにより、エアラインはインフラへの追加投資をすることなく、データの蓄積、管理、解析が可能になる。そのため、エアバスの顧客は、航空機、フリート全体に関しての新たな知見を得ることができ、価値を高められるという。

分析結果は個別ユーザーごとにまとめられ、エアバス、顧客、サプライヤーが利用できる拡張可能な仕様(解析、アプリ、API)で提供される。これにより、データの完全な継続性を確保し、バリュー・チェーン全体の価値を高められるという。このデータプラットフォームは、顧客の既存のITインフラとシームレスな相互運用性もつように設計。スカイワイズは複雑なデータ環境を多くの相互依存性の中で管理し、運用中のデータを共有することができるという。

現在、世界の航空会社の数社がすでにスカイワイズの初期導入社として運用を開始しており、Peachもその1社となる。これらの航空会社が参加しているプロジェクトには、特定事項の追跡および解決、ターンアラウンド時間の解析、運航解析、整備事項の予測、運航信頼性解析およびベンチマーク、整備決定支援などがある。さらに近い将来、スカイワイズはエアバス・ヘリコプターズ製品や軍用機、その他の製品オペレータにも適用を予定している。

初期のサービスとして、航空の核心となるデジタル・プラットフォームや航空機のコネクティビティに関する新規ソリューションの他、一部のプラットフォーム・アプリケーションや統合ダッシュボード(スカイワイズの初期導入エアラインとの間で進められている整備予測やフリート信頼性向けツールを含む)が提供される。