業界内での立ち位置は

メニューの刷新と新たな旗艦店「新丸の内センタービル店」のオープンで、新たな船出を迎える大戸屋。「やよい軒」など、業界にはライバルも多いわけだが、その事業規模はどのくらいなのだろうか。

日本フードサービス協会の外食産業市場規模推計(2015年度)による食堂・レストラン業態の推定規模は9.6兆円。前年度に比べると、その規模は微増ながら増えている。一方、大戸屋ホールディングスの業績を見てみると、2015年度の売上高は260億円だ。店舗数から見ても、まだまだファミリーレストランと肩を並べる存在ではない。

客単価850円という世界の中で、どう戦っていくのか。グランドメニューの改定は価格を上げ下げするのに格好のタイミングだったわけだが、人件費を含めた原価が上がるなかで、大戸屋が出した結論は「単価を維持する」ことであった。直営だけでなく、FCチェーンも含めた店舗展開の中で、安売り競争に参加しなかったことは大きな意味を持っている。

旗艦店に取り入れたもの

ファミリーレストランにはない、大戸屋ならではの強みと言えるのが、セントラルキッチン方式を用いない「店内調理」へのこだわりだろう。

店内調理の様子をオープンキッチンで見せる

大戸屋の「強み」を最大限に知ってもらうため、旗艦店に取り入れたのは、オープンキッチンに代表される「見せる化」だ。見える化、いわゆる可視化という観点ではなく、大戸屋の仕事ぶりを正しく知ってもらうための手法の1つとして取り入れたもので、「魅せる化」と表現しても良いかもしれない。札幌の店舗でテストし、好評だったため今回の店舗リニューアルに採用したという。

旗艦店ではデジタル化の部分も目を引いた。注文にはタッチパネルを使用できて、会計はセルフレジで済ませられる。こういった設備の導入により、丸の内店では注文時と精算時の接客時間を短縮できる。

タッチパネルで注文できる

外食産業は従来から学生が敬遠する業種の1つとなっており、バイト先としてだけでなく、就職先ランキングを見ても同様の結果が表れているのだが、スタッフの省力化につながる店舗のデジタル化は、「働き方改革」に結びつくメッセージにもなる。スタッフの作業軽減は、採用においても大きなメリットなのだ。