介護事業を手放して外食事業に専念するワタミ。プレイヤーが乱立する居酒屋業界にありながら、業態転換が功を奏し、好業績を収める店舗も出始めている。客数と既存店売上高という指標を見ると、おおむね前期比プラスで推移するなど今期業績には復活の兆しも見える。そんなワタミが立ち上げた新業態「にくスタ」。見据えるのは、さらに大きな市場の取り込みだ。

実際に行ってみた

京浜急行電鉄の京急蒲田駅から徒歩10分。第一京浜沿いに立地する塊肉ステーキ&サラダバー「にくスタ」は緑のロゴが目立つ看板が目印だ。ワタミが新業態を立ち上げた背景や狙いを分析する前に、まずは取材をかねて実際に店舗を訪れた時の様子から説き起こしてみたい。

にくスタの外観。一見するとワタミグループには見えないが、ロゴの緑はワタミのグループロゴと共通する色だ

肉が自慢の当店。まず目の前に登場したのはランプステーキだ。アツアツの鉄板に乗せられた肉は、豪州からチルド輸送された赤身肉を店内で切り分けたもの。鉄板がアツアツなだけではなく、再加熱用に丸い鉄の塊が添えられている。

内装はオシャレだ

肉の焼ける匂いがいやでも期待感をくすぐる。ステーキらしいほのかに焦げた香りが、食欲を押し上げてくる。店内で丁寧に筋切りされた肉はとても柔らかい食感。加えて肉の柔らかさが口の中で踊っている。この食感はチルド輸送だからこそ、再現できる味わいなのだろう。

価格帯は例えば「にくスタの一押しステーキ(300グラム)」がサラダ&デリカバー(ライス、スープ、デザートなど)が付いて2,440円(税別)、「炭火焼 情熱ハンバーグ(180グラム)」はサラダ&デリカバーが付いて1,590円(税別)といった感じだ

冷凍肉を解凍した場合、上手に解凍したとしてもドリップ(肉汁)が出てしまい、ぱさぱさの食感(舌触り)となってしまう。このぱさぱさ感を補い、焼き上がりのジューシーさを醸し出すため、多くのステーキ店では肉に牛脂などを注入して味を調えている(インジェクションと呼ばれる)というが、このにくスタではインジェクションを一切行っていないという。