コストと効果のシビアな関係

自動車メーカーにとってモータースポーツ活動は、ブランド価値向上策の一環でもある。また、レース活動に参戦することで技術を磨き、本業(市販車)にフィードバックすることもできる。さらに、モータースポーツファンを広げることも狙いだろう。

しかし、モータースポーツの最高峰と言われるF1は莫大な投資がかかり、一部では「金食い虫」との声も聞かれる。トヨタはすでに撤退し、再々参戦したホンダも困難な状況が続く。つまり、勝てなければコストに見合った効果が上げられない、ということでもあるのだ。

先日のF1「モナコGP」でホンダは、ジェンソン・バトン選手とストフェル・バンドーン選手が共に完走を果たせない厳しい結果となった(画像はバンドーン選手が搭乗したマシン)

「もっといいクルマづくり」の根幹と言う豊田章男トヨタ社長

ここ最近の日本車メーカーの中で、最もモータースポーツが好きな経営者は、トヨタの豊田章男社長だと言われる。「モリゾー」の名前でモータースポーツに自ら参戦するほどだ。先日のトヨタモータースポーツ活動発表会には、章男社長がサプライズ登場し、18年ぶりの世界ラリー選手権(WRC)復帰にかける熱い思いを語った。章男社長は、トヨタのモータースポーツ活動への取り組みは「もっといいクルマづくり」の根幹だと言う。

一方、ホンダがレース活動を続ける背景には、歴史的な出来事となったマン島TTレース参戦も含めた、「世界と技術力で戦う」企業文化がある。同社の伝統とも言える“負けず嫌い”な気質がレース活動に通底しているのだ。その企業文化が技術競争を生む原動力となり、レースに関わることで技術者が成長するという人材育成も重視する。

いずれにしても、F1復帰後もなかなか勝てないホンダにとって、インディ500を佐藤琢磨選手が日本人として初めて制覇したというニュースは、朗報であり今後の糧になるだろう。