世界最大の中国市場、ローカルブランドも成長

中国の自動車市場は世界最大の規模となっている。2016年(暦年)の全体需要は日産の集計で2688万台。米国の1749万台に比べても1000万台近く規模が大きい。

日産の中国事業を見てみると、2016年(暦年)の自動車販売台数は前年比8.4%増の135万5000台。「エクストレイル」「シルフィ」「キャッシュカイ」といった車種が好調で、その成長率は日本や北米などを抑えてトップとなるほど高い。

中国でも売れているという「エクストレイル」

ただし、中国の全需の伸びは2016年で対前年13.2%と「たいへん大きな伸び」(西川社長)を示しているため、結果的に、日産の中国におけるシェアは2015年の5.3%が2016年には5%へと低下している。販売台数の伸びが市場の成長レベルに追いついていない要因について、西川社長は「中国ブランドの勢い」が増している点を指摘した。

「エンジニアリングもクルマの品質も格段に上がっている」。これが西川社長のローカルブランドに対する見方だ。日産は中国に合弁会社の東風日産乗用車公司(東風日産)を持ち、ローカルブランド「ヴェヌーシア」を展開しているが、現地勢の勢いには追いつけていないという。

3つのブランドで巨大市場を開拓、EVも拡充へ

もちろん日産も手をこまぬいているわけではない。2016年12月にはヴェヌーシアからクロスオーバーSUV「T90」を発売。その結果として、2017年1~3月の中国における日産の販売台数は31万4000台と、前年同期に比べ5.3%の伸びを示している。全需の伸びは5.2%だったので、この3カ月については市場の成長を上回る伸び率を達成したわけだ。

ヴェヌーシアが中国の若者向けに発売した「T90」

日産としては、どちらかといえばロースペックなクルマをヴェヌーシアで販売し、ハイスペックなクルマを求める顧客には日産ブランドで訴求する構え。いずれ世界最大規模になるであろう中国のプレミアムカー市場ではインフィニティで勝負する。

中国ではエコカーの販売を促す「New Energy Vehicle(NEV)規制」が動き出そうとしているが、そのあたりについても、電気自動車(EV)のパイオニアである日産としては準備を進めている。すでにヴェヌーシアでは、小型の100%EV「e30」を展開しているが、2018年にも小型の廉価版EVを発売すべく仕込みを進めているそうだ。

画像はヴェヌーシアの「R30」。このクルマをベースとするEVがe30だ

世界最大の市場なので、どの自動車メーカーも中国には注目していると思うのだが、日本メーカーの決算会見を回ってみた感想としては、ここまではっきりと中国市場の攻略に意欲を示しているのは日産だけのような気がする。現地勢も力を増しているし、独フォルクスワーゲンなども同国で強力なライバルになると見られるが、この巨大市場で名をとどろかせることができれば、日産の成長は確実なものとなるだろう。