宇宙航空研究開発機構(JAXA)と気象庁が共同で開発した「空港低層風情報(Airport Low-level Wind INformation)」(以下、ALWIN)の実運用が、4月19日から羽田空港と成田空港で開始された。従来の管制官からの音声による情報提供に比べ、風の状態変化をより詳細かつ正確に把握できるため、速度や推力の調整、姿勢の制御等、パイロットが適切な対応を行うことが可能になる。

ALWIN運用評価の様子(撮影協力: JAL)

ALWINとは、航空機の着陸経路上における風向・風速、ウィンドシアー(低気圧や前線の付近で生じやすい風の急変域)や乱気流等の風の情報を提供するサービス。現在、管制官から無線による音声通信で行われているウィンドシアー等の情報提供に比べて、風の状態変化をリアルタイムでより詳細かつ正確に把握できるため、より安全に着陸することが可能。このような風情報サービスの実運用は世界で初の事例となる。

例えば、成田空港では毎年100件程度の着陸復行(ゴーアラウンド)が発生し、そのうち9割程度が、ウィンドシアーや乱気流の影響と言われている。1回着陸復行を行うことで、到着時刻が20分程度遅延する原因となりえる。また同空港では、着陸時の乱気流の影響による乗員・乗客の死傷事故が過去10年間で2件発生している。ALWINの実運用開始により、安全性や定時性向上の効果が期待され、今後、これらの導入効果の検証を進めていく。またJAXAでは、ALWINの技術を応用したより低コストなシステムの開発も進めている。

ALWINの情報提供の流れ

JAXAはウィンドシアーや乱気流の自動検出プログラムの開発、及びACARSを用いたパイロットへの情報生成プログラムの開発を担当し、気象庁はドップラーレーダー及びドップラーライダーの観測データを用いた風算出プログラムの開発、及び航空気象観測業務の一環としてALWINの運用を担当。

ALWINの情報提供の流れとしてはまず、地上に設置された空港気象ドップラーレーダー及びドップラーライダー等の観測データから、ウィンドシアーや空港周辺の地形や建築物の影響等による乱気流を自動的に検出。グラフィックデータで運航会社に配信するとともに、ACARS(※)で送信可能な形式に変換して航空機に送信する。航空機への送信は現在、JALとANAのみを対象として試行的な運用を行っている。

※ACARS(Aircraft Communication Addressing and Reporting System)とは、すでにほとんどの旅客機に装備されている航空機と地上とのデータ通信システムのこと