テレビ局が一斉に衣替えを行った秋の番組改編。10月からタイムシフト(録画)視聴率、それとリアルタイム視聴を加味した総合視聴率の計測もスタートし、新たな指標で視聴形態が浮き彫りとなっていた中、民放キー局の編成戦略を担う「編成部長」に、今回の改編の総括と今後の展望を語ってもらった。

最後に登場する日本テレビは、昨年秋に、各局が強力な新番組を投入した日曜ゴールデンタイムも、『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』をはじめとして横綱相撲を展開し、3年連続で「年間視聴率三冠王」を達成。こうした盤石のタイムテーブルを誇る地上波に加え、BS・CS・Huluといった総合的な編成戦略を"最重要ポイント"として位置づけているという――。


日本テレビ 福士睦 編成局編成部長
1969年生まれ、早稲田大学政経学部卒。1992年、日本テレビ放送網に入社。制作局専門部長として『世界一受けたい授業』『24時間テレビ』などの総合演出を担当。編成局企画担当部長などを経て、2016年6月から編成局編成部長に。

――2016年の年間視聴率が3年連続三冠王という好調で、秋の改編も小幅でした。プライム帯唯一のバラエティ新番組である『1周回って知らない話』の状況はいかがですか?

視聴率面で言いますと、2回目の放送で12.9%という横並びトップを獲得し、この枠で戦えるんじゃないかという感触を得ました。発明品とも言えるような番組に育つにはまだブラッシュアップしなければいけない部分もあると思いますが、良い方向に向かっています。

――日曜の午前帯に目を向けると、『誰だって波瀾爆笑』の時間枠を30分拡大して90分番組にされました。『サンデー・ジャポン』(TBS)、『ワイドナショー』(フジ)というワイドショー系番組の対決が注目される時間帯ですが、こちらの状況はどうでしょうか。

こちらも両番組が非常に強いので激戦区ですが、『波瀾爆笑』は1月15日のOAでも12.5%と横並びトップの視聴率を獲得し、60分番組の時よりもかなり数字を上げています。これで日曜日の縦の流れが、さらに良くなっているという状況です。夕方は『笑点』が引き続き高視聴率を獲得し、昼の『スクール革命』も10%を超えるなど好調です。

――昼は『アッコにおまかせ!』(TBS)、『ビートたけしのTVタックル』(テレ朝)と、午前中と同じように情報系の番組がせめぎ合っていますが、日テレさんはそことは違う路線で独自のカラーを出している印象です。

他局さんと差別化することで情報系以外の視聴需要を取り込めているかもしれませんね。

――金曜の夜についてはTBSが強い時間帯ですが、その牙城を崩すべく、半年ごとに新番組を投入されました。

15年秋に19時台の『沸騰ワード10』、16年春に20時台の『究極の○×クイズSHOW!! 超問!真実か?ウソか?』とドラスティックに改編したのですが、『沸騰ワード10』に関しては人気企画も生まれて、1月のスペシャルが13.2%を取るなど着実に育ってきています。『超問』も、1月のスペシャルが12.1%としっかり結果を残しています。視聴率的にはまだTBSさんを追っている状況ではありますが、企画の軸はしっかりしており、OAを重ねるごとに番組としての足腰が鍛えられてきていると思います。

『1周回って知らない話!』(毎週水曜19:00~19:56)
"今どきの視聴者"が知らない有名人に関する疑問を、直接本人にぶつけて明らかにしていくバラエティ番組。(写真左から MCの東野幸治、アシスタントの川田裕美)

――着実に足固めが進んでいるんですね。昨年秋の改編は日曜ゴールデンタイムに各局新番組を投入して注目を集めましたが、引き続き日テレさんは『ザ!鉄腕!DASH!!』『世界の果てまでイッテQ!』で、"王者の貫禄"を見せているなという印象です。

『イッテQ』は、11月から4週連続で20%超えも記録して、おかげさまで好調を維持しています。

――裏で新番組が一斉に始まることで、なにか対策などはされたのでしょうか?

『日曜もアメトーーク!』(テレ朝)、『クイズ☆スター名鑑』(TBS)が始まった10月に、日曜の看板番組の流れのイメージをしっかり打ち出す施策として『ザ!鉄腕!DASH!!×世界の果てまでイッテQ! はじめての交換留学スペシャル』と題し、スペシャル番組を編成しました(視聴率は20.5%)。

――もともと強かった日テレさんの視聴率が、10月以降さらに上がっていますよね。

他局さんが「定評のあった番組を復活」「深夜の大人気番組のゴールデンタイム版」「ブッキング的に注目度の高い2時間番組」など、いろんなベクトルで日曜日に新番組を始められたので、日本テレビの制作現場もさらに視聴者に支持される面白い番組を目指して気合が入っています。地上波タイムテーブル全体の活性化にもつながると思いますので、日曜夜が盛り上がっている感じはとても良いことだと思います。