ドラマ「下剋上受験」の原作者、桜井信一氏が、中学受験について語った

2017年1月13日にスタートするTBS系ドラマ「下剋上受験」。中卒の父と偏差値41の娘が、最難関中学を目指した同名タイトルの実話をもとに、家族の奮闘を描く内容となっている。

このたびのドラマ化を記念して、マイナビ家庭教師を運営するマイナビは、原作者・桜井信一氏による講演会「勉強は、人を、家族をここまで変える」を開催。桜井氏が考える"中学受験をする意味"とは、何なのだろうか。

勉強でもがく経験が生きる力になる

「普通の家庭と肩を並べて子育てするには、生きる力が必要でした」と語る桜井氏。その生きる力の一例として紹介したのが、ポスティングのアルバイトで、効率よくお金を稼ぐための知恵だ。

一般的なアルバイトでは、業者が依頼するチラシを1枚ずつ配っても、1晩でせいぜい2,000枚、4,000円程度の収入にしかならない。しかし桜井氏は、異なる業種の会社に直接出向き、それぞれポスティングの仕事を受注。あるときは、1世帯につき、3社分のチラシ3枚を同時に配ることで、1晩で1万8,000円、週数回のバイトで月10万円ほどを稼ぎ、教育費にあてたという。

そんなエピソードを披露した上で強調したのが、「私のような生き方は誰だって避けたいかもしれませんが、生きる力は"学"で補充すればいい」という言葉だ。「『勉強=生きる力』ではなく、成績アップのためにもがいたとき、得た知恵が生きる力になる。勉強でもまれたことがある子どもは、大人になって強いと思います」。実際に、私立中学に進学した娘さんは、勉強を自分の本分だと理解し、楽しんで、学校生活を幸せそうに過ごしているという。

下剋上はあたたかく迎えられた

受験生を持つ親、受験を考えている親らが、講演に耳を傾けた

しかし、中学受験といってもさまざまだ。お金がなければ、学費の安い国立中学への進学を目指してもよかったかもしれない。しかし桜井氏は、私立の難関中学にこだわったという。「一定以上の富裕層に生まれながらも、精いっぱいがんばった子たちの集う場所に、わが子を入れたかった」。富裕層がどのような感覚で、どういう価値観で生きているのか、自分の目で直接見てほしかったのだとか。

「実際に入学してみると、学力勝負の世界に富裕層かそうでないかは、全く関係ありませんでした。下剋上をする者を、あたたかく迎えてくれた、というのが現実でした」と桜井氏。娘さんだけでなく、周囲の子どもたちも、合格をきっかけに自分に自信をつけ、ハイレベルな教育によって自主性を持つようになり、パワフルになった子が多いという。桜井氏は、「良家の子女でもないのに、勉強するだけで、こんな環境が手に入るなら、学費以上に得るものが大きい」と、その利点を挙げている。

"人脈のなさ"で苦しんでほしくない

さらに社会に出たとき、人脈がないことで苦しんだという自らの経験をもとに「"学"も大事ですが、人脈こそ、娘になんとしてもつけてやりたかった」とも語った。「世の中の仕組みを見ていて、人脈に勝る資産はないのではないかと、つくづく感じていました。判断に迷う時、手がかりを得ようとするとき、人脈があれば攻略できる」とその理由を述べている。

「首都圏の中学受験人口は約4万人。このうち、超難関中学の男女合格者数は、約2,000人。競争相手は、通学圏内の同級生に限られることを考えれば、こんなに高確率で勝てるレースはないと思いました」。可能性が少しでもあれば、狙ってみるべき、と受験を勧め、「もともと頭のいい神童だけでは、決して合格者の席は満席にならない。努力枠が必ず存在していると確信しています」と、受験生の親たちを励ました。

多少のリスクを背負っても、子育てをがんばりたい

教育には膨大な費用がかかる。家計の備えを重視すれば、中学受験をし、私立中学に通うことは、リスクが大きいかもしれない。それでも桜井氏は、「子どもが親を選べない以上、親はお金持ちの子が持つ幸せに負けないように、多少のリスクを背負っても、子育てをがんばらないといけないと思っています」と語った。

「子どもたちは将来、今以上の格差社会に直面するでしょう。私のときとは違い、もっと生きる難易度の高い、七転八倒する時代になるのではないでしょうか」と桜井氏。将来、娘さんがそんな社会を生き抜くために、今できることを精一杯やらなければ、きっと後悔すると考えたことも、受験のきっかけになったという。

どの親も、それぞれに教育方針は異なる。もちろん、公立中学校のよさを見いだす人だってたくさんいる。しかし、娘の将来を最大限に考えた信念のもと、ともに中学受験へ奔走した1人の親の言葉には、響くものがあるのではないだろうか。