公立・国立・私立。それぞれの特徴を知ろう

加熱する受験戦争をテーマにしたドラマが放送されるなどして、一躍有名になった「お受験」。何年かに渡って複数の教室に通わせ、家庭では子どもの生活態度に対して母親がこと細かく指摘。母親は子どものマネージャーのように日々付きっきりでサポート。このようなイメージが先行し、「専業主婦じゃないとお受験はムリ」という先入観が広がっているようにも感じます。しかし、実際のところはそんなことはありません。

ここでは全10回にわたり、小学校受験について解説していきます。特に、共働き家庭に向けた情報を多く盛り込んでいきますので、小学校受験のメリット・デメリットをよくご理解いただき、子どもの将来を考える際のお役に立てればと願っています。

公立・国立・私立のメリット&デメリット

初回は基本的な解説から。小学校には大きくわけて、「公立校」「国立校」「私立校」の3種類がありますので、その特徴やメリット・デメリットをお話していきましょう。

公立校は最も一般的で、自宅から徒歩圏にあり、各地方公共団体の教育委員会が運営。受験をせずに入学できる小学校です。公立の良いところは、徒歩圏にあるため通学に負担がない、近所に友達ができるため学校外でも楽しく過ごせる、授業料が安い、制服や指定用品が少なく管理が楽、といったことがあげられます。一方、懸念すべき点としては、地域により学力が大きく異なる、担任等が転勤で変わりやすい、どのような家庭の子が集まるか入ってみるまでわからない、という点があります。

国立校は国が運営しており、公立から選抜された先生が教鞭をとっています。文部科学省の教育研究フィールドでもあり、教育方針と選抜方針が年単位で変化することが大きな特徴です。入学するには志願と受験、そして抽選を通過する必要があり、また公立よりは広範囲ですが、学校ごとの指定学区域に居住している必要があります。良いところしては、経済的負担が少ないながらもある程度の環境が保障されている、先生の転勤が少ない、通学負担が軽いといったところです。一方、推薦による内部進学がないため、系列の附属中学に進学するにも受験が必要となります。また、文部科学省の方針や教育に関する研究内容がどう変化するか予測不能、抽選があるため受験準備をしても受けることすらできないことがある、以上が検討すべき点になります。

私立校は学校法人が運営する小学校で、独自の教育理念のもと、独自の運営管理を行っています。入学するためには志願し、受験する必要があります。男子校・女子校もあり、宗教を持っている学校も多くあります。私立のメリットは、家庭が納得した方針の教育を選択できる(仮に宗教のある学校に入学しても、入信を強要されることはありません)、一定基準以上の家庭環境の子が集まる、学習準備の整った子のみのため入学直後からしっかり授業が始まる、先生の転勤がほぼない、学校によっては内部進学が可能となり、よほどのことがない限り受験なく進学が可能であることです。デメリットとしては、経済的負担が大きい、交通機関を利用した通学が多いため負担となる、受験準備が必要である、ということでしょう。

ではどのような基準で私立小学校が合格を決めているかというと、両親に関しては、その学校の教育方針をよく理解した上で入学を熱望しているか、校風や教職員を重んじる意思があるか、家族の雰囲気は良好かを面接で見られます。面接がない学校に関しては、願書でこれらを確認しています。

子どもに関しては、「指示を的確に理解し、忠実に実行する能力」と「机に向かった学習をし、多様な分野の能力を身につけているか」を試されています。一部ペーパー(筆記試験)を行っていない学校がありますが、試験内容を聞いていると、筆記試験という形態を取っていないだけで試験中に口頭試問が繰り返され、ルールを順守しながらも臨機応変に頭を使えていたりするかを見る行動を観察されていますので、いずれも時間をかけた訓練が必要となります。

家庭での教育度合いや子どもの性格にもよりますが、理想は2年、どんなに短くても半年は準備に時間をいただきたいのが学習塾としての本音です。準備期間が短ければ短いほど習得を急ぐ必要のある内容が多いということになり、子どもへの負担も急激、かつ多大なものになり、試験本番で付け焼き刃が露呈するといったリスクも避けられません。

しかし準備期間を長く取れれば、子どもに負担を少なく自然な形でたくさんのことをじっくり身につけて、応用するコツまで伝授することができます。

小学校受験とは、それだけの時間と労力、費用をかけてもすべきことなのか。子どもにとって良いことなのか。お悩み解決の一助になれるよう、次回より私立小学校受験について詳しく解説していきます。

※画像は本文と関係ありません。

著者プロフィール

小学校受験向け幼児教室「クラリティー・キッズ」主宰
五島 真知子
自身が小学校受験を経験し、大学までの私立一貫校を卒業。
大学時代に縁あって小学校受験塾(クラリティー・キッズ前身)で4年間アルバイトとして従事。
大学卒業後は伊藤忠商事に総合職として約12年間勤務するも、結婚・出産・事故による負傷を経て退職。学生時代にアルバイトをした小学校受験塾の前オーナー引退に際して事業を継承し、現職。
何事にも果敢に挑戦する意欲を持ち、目標を達成する為の努力を楽しむ心意気を持った輝く子どもを育成するため、教材作成から指導まで広範囲の指導を行う。

※2015年度合格実績(順不同)
慶応義塾幼稚舎・慶応義塾横浜初等部・立教小学校・早稲田実業学校初等部・東洋英和女学院小学部・聖心女子学院初等科・東京女学館小学校・東京都市大学付属小学校・洗足学園小学校・カリタス小学校・精華小学校・目黒星美学園小学校・桐蔭学園小学部