初期段階の兆候も重要だが、一方で脳腫瘍の原因もきちんと理解しておく必要がある。例えば、脳出血は塩分やアルコールがリスクファクターとなるため、塩辛い食品やお酒を控えれば自ずと罹患リスクを低減できる。

翻って脳腫瘍はどうかというと、福島医師は「脳腫瘍に特異的な原因はなく、『これをすれば脳腫瘍になりづらい』といった行動はありません」と話す。特殊な遺伝子を持っている一部の人たちの間では脳腫瘍が遺伝するケースもあるそうだが、その原因の多くはなぞのままとなっている。

ただ、一般的に腫瘍の成長を促すとされている「NG項目」は、脳腫瘍にも共通する。日常生活における注意すべきものとしては、「過度のストレス」「脂肪分の多い食品」「喫煙」などがある。該当する人はライフスタイルを変えるなどして、気をつけた方がよい。

認識を改める必要性

がんになった際によく語られる「5年生存率」を脳腫瘍に置き換えることは難しい。タイプが数十種類もあるし、それぞれでグレードも異なるためだ。例えば、良性の髄膜腫ならばその確率はI~IIIのいずれのグレードでも約9割だが、平均余命が1年の膠芽腫(神経膠腫のグレードIV)の場合は、そもそも5年間の生存を確認することすら難しい。

だが、どの腫瘍であれ「早期発見の重要性」は揺るぎない。福島医師は「脳腫瘍は本当に症状から決めつけないほうがいい」と、取材中に何度も強調して話してくれた。頭の痛みや視力・聴力の低下……。脳腫瘍の兆候はどこに現れているかわからないからだ。

頻繁に頭痛に悩まされていれば、「どうせいつもの頭痛だろう」と私たちは自己判断しがちだ。特に年齢を重ねるほどそれらの症状に慣れが生じ、経験則で「大したことはない」と決めつけてしまうだろう。

どんなささいな症状であれ、心身に不調があるときは大きな病につながりかねないという危機感を、私たちは今一度認識する必要があるのかもしれない。


記事監修: 福島崇夫(ふくしま たかお)

日本大学医学部・同大学院卒業、医学博士。日本脳神経外科学会専門医、日本癌治療学会認定医、日本脳卒中学会専門医、日本頭痛学会専門医、日本神経内視鏡学会技術認定医。大学卒業後、日本大学医学部附属板橋病院、社会保険横浜中央病院や厚生連相模原協同病院などに勤務。2014年より高島平中央総合病院の脳神経外科部長を務める。