ファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリーの4社はこのほど、「4社合同プレスセミナー インターネットに流通する偽造医薬品の実態と対策~偽造ED治療薬4社合同調査の結果を発表」と題したプレスセミナーを実施した。

偽造医薬品の実態調査と報告を4社合同で行った

当日は昭和大学藤が丘病院泌尿器科の佐々木春明教授、金沢大学 大学院医薬保健研究域薬学系 国際保健薬学研究室の木村和子教授、レジットスクリプト アジア政策・執行部長の岡沢宏美氏を講師に招き、偽造医薬品の実態と現状について講演した。その詳細をレポートする。

日本の偽造ED治療薬の現状

まず、佐々木教授がED治療と偽造医薬品の現状について説明した。

昭和大学藤が丘病院の副院長で泌尿器科の佐々木春明教授

EDとは、勃起の発現あるいは維持でないために満足な性交ができない状態のことを指す。35歳から急激に増え始め、70歳代以上まで分布しているという。

EDの症状がみられる人は、糖尿病や高血圧、高脂血症、前立腺肥大症などの併存疾患が認められることもある。EDの症状を訴える人が増え始める35~39歳では72.8%には併存疾患が認められないが、70~74歳になると併存疾患がないED患者は39%ほどしかいない。加齢に伴い、リスクが高まるわけだ。

このようなEDの症状にはPDE5-Is、つまりED治療薬が非常に有効だ。35歳~39歳では95.2%、70~74歳でも75.5%がPDE5-Isの作用によって症状が改善しているという。このように高い効果が期待できる薬なのだが、インターネット通販などを中心に偽造薬が出回ってしまっているのが現状だ。

EDは35歳以降に増え始め70代まで患者がいる

年齢と併存疾患の関係

治療にはPDE5-Isが有効

偽造品の割合は減ったが……

そこで今回、ED治療薬を取り扱っているファイザー、バイエル薬品、日本新薬、日本イーライリリーの4社が合同で実態調査を行った。調査機関は2016年3月~8月で、日本とタイの調査会社に調査を依頼。日本国内で45サンプル、タイで25サンプルの計70サンプルを入手し、各社が真贋(しんがん)を鑑定。化学分析も実施した。タイでの調査が行われた背景には、タイで日本人が偽造ED治療薬の販売に関与している事案が数件存在したことによる。

その結果、偽造品の割合は40.0%となった。前回調査(2008年8月~2009年4月)の調査では55.4%であったので、割合としては減少していることになる。偽造品の割合が減っているということは、インターネットによる購入の状況がよくなっているように感じてしまうが、実態はそうではない。

財務省による医薬品の輸入差し止め実績件数を確認してみると、前回調査の2008年は501件だったのに対し、2015年では1030件と件数は倍増している。医薬品の錠数で実績を確認してみると、2015年は9万錠に迫る勢いで2014年の倍以上の数となってしまっているという。つまり、割合としては減っているようにみえるが、偽造品の総数を考えると増加していると考えられるのだ。

偽造ED薬の割合は前回調査からは減少。しかし、医薬品の輸入差し止め件数・錠数という観点でみると、総量は増加していると考えられる