TSUTAYAが主催し、今年で2回目を迎えたプロ・アマ向けのコンテスト「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」(以下TCP)。今月10日に都内で行われた最終審査会で審査員を務めた犬童一心監督は、"未来"の映画監督たちに向けてメッセージを残していた。

犬童一心監督

375企画のうち、最終審査に残ったのは8作品。その中から、現在放送中の読売テレビ・日本テレビ系『黒い十人の女』の演出も手掛けている渡部亮平氏『哀愁しんでれら(仮)』がグランプリに輝いた。同作は、不幸のどん底にいた女性が理想の結婚相手と出会うも、徐々に家族の絆という"毒"に侵食されていく姿を描く。誰もが憧れる"シンデレラストーリー"のその先を、独自の視点で深くえぐった。

そのほか、幽霊を信じないホラースタッフの前に本物の幽霊が現れる『ゴーストマスターズ! ~呪いのビデオができるまで~(仮)』(ポール・ヤング氏)、父が白血病の娘を救うために妻の浮気相手を探す『ファインディング・ダディー(仮)』(金井純一氏)が準グランプリ、"田舎嫌い"の心情を描写した『ブルーアワー(仮)』(箱田優子氏)が審査員特別賞に。

『ジョゼと虎と魚たち』(03年)、『メゾン・ド・ヒミコ』(05年)、『グーグーだって猫である』(08年)、『のぼうの城』(12年)など数多くの名作を誕生させてきた犬童監督。準グランプリのプレゼンターとしてマイクの前に立つと「いろいろ問題ありますが、面白かったです(笑)」と切り出して会場の笑いを誘い、脚本を書く上での注意点やTCPの存在意義などを熱弁。次回応募者に大きな期待を寄せた。

■犬童一心監督のスピーチ全文

いろいろ問題ありますが、面白かったです(笑)。

18歳の時に8ミリで初めて映画を作りました。「ぴあフィルムフェスティバル」に入選して、自分の映画が選ばれたことがめちゃくちゃうれしかった。だけどその後、映画を作らせてもらえませんでした。

それから自分で映画を作るまでに……何年かかったんだろう……10年? 日本映画界は分かりやすく言うと、新しい才能を見つける場所があまりないんです。育てる力もないので……(TCPを)できるだけ長く続けてください。本当に実力のある人はいると思うので、その人たちがどんどん出ていったら日本の映画が面白くなることは間違いありません。そういう人たちが出てきてこそ、作品との新鮮な出会いも生まれます。

全作品を見た感想を一言だけ言いたい。基準は何かというと……僕は全員分を読んでいる。みなさんは自分の作品しか作っていない。そして、僕は過去にむちゃくちゃ映画を観ている。テレビも。

作品を観た時にいちばん残念なのが、見たことあるキャラクターとストーリーだったとき。たとえ乱暴で出来が悪くても、新しいキャラクターや新鮮なものと出会った時の方がうれしいです。

人によって違うかもしれませんが、これは僕の場合。でも、こういう審査のときには意外と重要なんです。(脚)本を書く時に、(登場人物を)ぜひ一人ずつ点検してみてください。これは自分が前に見たドラマのあの人物と一緒ではないか?

さらに言うと、1つの脚本の中で同じような人が2人出ているものもありました。これが意外と気づいていなかったりする。一人ひとりが全員違う人間なんだということを確認しないと、撮っていてもあまり面白くない。違う人がいるから、撮っていて面白いんです。

既視感のある、どこかで会ったことがあるようなキャラクターがすごく多かった。それがないものが、僕の中で評価が高かった作品です。