歯にまつわるウソ・ホントに迫る!

歯磨きをしないとむし歯や歯周病になる。そういう共通認識があっても、人それぞれ生活スタイルが異なるため、オーラルケアは自己流になりがちだ。間違った方法が習慣化していても、なかなか気づかないことも多いだろう。

そこで今回は、歯科の能美陽子医師に、歯にまつわる素朴な疑問について真相を教えていただいた。

――家族間での歯ブラシ・コップ等の使い回しは、しても大丈夫ですか?

基本的に、むし歯や歯周病は細菌によって引き起こされる疾患です。むし歯菌がいなければ、糖分コントロールが不良であってもむし歯にはなりません。また、生まれたばかりの赤ん坊の口腔内にはむし歯菌はいませんが、成長過程で周りの保育者から知らない間に菌が移行し、やがて口腔内にすみつくのです。

家庭内で菌が移行していくのは、共に生活するわけですから、ある意味自然の流れだと思います。「リスクを減らす」という点から見れば、歯ブラシやコップの共有は避けるべきでしょう。特に、赤ん坊など3歳以下の子供と大人の共有は少なくとも避ける方が、むし歯のリスクを減らせるだろうと考えます。

しかし、むし歯菌がいるからといって必ずしもむし歯になるわけでもない、というのが実際です。むし歯は菌がいるからという理由だけでは成立しないからです。他に気をつけなければいけないのは、「糖分コントロール」「プラークコントロール」の2つです。要は、"菌の活動が活発にならないように、どのような工夫をしているか"がとても重要なのです。糖分の入った飲食物をどんな頻度で摂取しているのか、また、磨き残しのないようにいかに丁寧にブラッシングを行っているか。むし歯や歯周病は生活習慣病です。日々の積み重ねが、やがて大きな結果となってくるのです。

――夜にしっかりと歯磨きをしていれば、朝の歯磨きはしなくてもいいですか?

基本的に、歯磨きは1日3~4回はする方がいいと思いますので、朝の歯磨きは必須です。なぜなら、夜間睡眠中は唾液の分泌量が減ります。そのため、自浄作用が減り、口腔内の細菌数はかなり増加します。つまり、寝る前に歯磨きを頑張って菌の数を減らしても、朝には増えているのです。

食べたら磨く。寝る前に磨く。そして、起きたら磨くのです。菌の活動性を下げるポイントは、糖分を口腔内に残さず、プラークをためないこと。菌が活動しにくい環境をどうやって作り維持するかが大切なのです。