飲みに行くと「とりあえずビール!」の注文をよく聞く。また、家では缶ビールを飲むという人も多いだろう。そんな気軽に飲めるビールだが、本当のビールの美味しさを知ってほしいと奮闘するお店がある。

大阪・心斎橋にある「Arcadian」は、店主の大滝一氏が「大手ビールメーカーのピルスナービールの本当の美味しさを知って欲しい」と始めた店だ。同氏はビアコーディネーターはもちろん、ソムリエの資格も持つ。そんな大滝氏に、自らの店で提供する「一番うまい」と考えるビールの注ぎ方、そしてそのビールと最高のマリアージュを奏でるArcadianで人気の料理メニューを紹介してもらった。

心斎橋「Arcadian」で飲める"最高のサッポロ生ビール"とは!?

大手ビールメーカーのビールも個性がある

「Arcadian」の看板ビールは「サッポロ生ビール」(600円)で、これには理由がある。「各クラフトビールメーカーと同じように、大手ビールメーカーのピルスナービールにも個性があります。あくまで個人的見解ですが、キリンは苦み、サントリーは甘み、アサヒは喉ごし、そしてサッポロはバランス。当店ではサッポロ生ビールが持つ甘みや苦み、爽快感のバランスを引き出し『日本一おいしいサッポロ生ビールが飲める店』をめざして日々努力しています」と大滝氏。

「Arcadian」には7つのタップ(注ぎ口)が設置されており、タップから注がれる以外にも、多くのクラフトビールがオーダー可能だ。グラスも5種類を用意しており、ビールの個性に合わせて選んだ最適なグラスに注いで提供している。

ビールグラスは5種類を用意

それでも、この店の一番人気はサッポロ生ビールであり、ほとんどのお客さんが1杯目にオーダーする。そういった点からも「Arcadian」で飲むサッポロ生ビールは、家で飲むのとはまた異なる美味しさが楽しめるのは間違いない。

サッポロ生ビールの本当の美味しさを引き出す注ぎ方を解説!

では「Arcadian」で飲むビールは何が違うのか。「美味しいビールの理由の7割はビールの鮮度とビールラインの洗浄です。残り3割の美味しさを提供するために注ぎ方にこだわっています」と大滝氏。ここからは、最高に美味しいサッポロ生ビールが楽しめる注ぎ方を紹介しよう。

1)オーダーを受けてからグラス再洗浄

まずはグラスを再洗浄

事前に洗って乾燥させてあったグラスをオーダーを受けた時点で再度洗浄。これにより、グラス表面に残っているわずかな洗剤や水アカを落とす。異物がグラス内側に付着していると、そこに空気の泡が付着してビール内の炭酸が奪われてしまうのだ。

2)グラスを氷水に浸した後、数秒放置して水を少し落とす

グラスを氷水に浸す

乾燥したグラスだと、サーブ時にビールの炭酸が抜けてしまう。それを防ぐために、再洗浄したグラスを氷水に浸す。ただの水ではなく氷水を使うのは、グラスを少し冷やしてサーブ後の温度上昇を小さくする意味もある。

数秒間放置し、余分な水分を落とす

その後、濡れたグラスを数秒放置し、余分な水分を落とす。

3)ビールを注ぐ

ビールを注いでいく

そして、いよいよビールを注ぐ。最初にタップからは泡が出る。この泡をグラスに入れてしまうと、ビールの泡が多くなってしまうのでグラスには入れない。タップから泡が出なくなってから、ビールを静かに注ぎ入れる。この時、炭酸が抜けないようグラスに静かに注ぎ込む。そして、7割注いだところでタップのレバーを反対側に倒し、今度はビールの泡を出してビールの上に乗せるように静かに入れていく。

泡はあえて吹きこぼし、粗い泡を落とす

このとき、泡を吹きこぼれるまで注ぐのがポイント。こうすることで、キメの粗い泡が吹きこぼれ、クリーミーな泡だけがグラスの中に残るのだ。

4)再びグラスを氷水に浸す

ビールを注ぎ終わったら、再びグラスを氷水に

ビールを注ぎ終わったグラスを再び氷水に浸すことで、吹きこぼれてグラス表面に付着した泡を落としつつ、グラス表面をキレイにする。そして最後に、正しく注げているかどうか、グラス外側から目視で確認。

5)お客さまに提供

お客さまに提供

ビールの黄金の液体と泡の境界部分に、さらに小さな泡(フロスティミスト)の層ができていて、グラスの内側に気泡がついていなければ、それは最高に美味しい注ぎ方をしたビールの証し。グイッと飲んでその美味しさを堪能しよう。

美味なる一杯の傍らには、美味なる料理も満載!

うまいビールを飲むなら、うまい料理とともに飲みたいに決まっている。「Arcadian」はそんな希望をもちろん満たしてくれる。

一番人気の「Arcadian特製メンチカツ」(900円)は、店名を冠した名前が示す通り、同店の看板メニューのひとつだ。ナイフを入れた瞬間にさっくりと通り、肉汁がジュワッ! とあふれるジューシーさには驚くばかり。ソースは甘さを控え、サッポロ生ビールとのマリアージュが存分に楽しめる。

「Arcadian特製メンチカツ」(900円)

さらに「フィッシュ&チップス」(650円)も人気のメニューだ。白身魚はビールを加えた衣で揚げることによってサクサク感が増し、ビールとのマリアージュもより楽しめる。自家製タルタルソースをたっぷりつけて、ビール片手に味わおう。

「フィッシュ&チップス」(650円)

確かにビールは家でも飲める。ただ、お店でしか味わえないビールの美味しさもある。ぜひ「Arcadian」で、家や居酒屋では味わえない本当のビールの美味しさを堪能してほしい。

●information
Arcadian
大阪府大阪市中央区南船場4-11-7
アクセス: 地下鉄「心斎橋」駅より徒歩3分、または、地下鉄「四ツ橋」駅より徒歩4分
営業時間: 月~金曜日 11時30分~14時・17時~23時
土曜日 15時~23時
定休日: 日曜&不定休

※価格は全て税込

筆者プロフィール: 中 直照(なか なおてる)

大阪出身のコピーライター。出版社や中堅ゼネコンなどを経てフリーライターとして独立。その後、2011年にショートカプチーノ設立。コピーライターとして経営者インタビューや企業広報誌、店舗取材など、幅広く執筆。ほかにもホームページ用コンテンツの企画や制作などにも携わっている。