なぜ「パリピ」は流行りをつくりだせるのか

――「パリピ」は様々なイベントやフェスなどを流行らせてきたかと思いますが、なぜだと思いますか

「パリピ」の特徴として、面白い情報を「フィクサー」からキャッチして、初期の段階で情報を察知する情報感度の高さと、SNS等で発信する拡散力の2つを持っている人たちが多い。だからこそ、情報が広がっていくというのが大きいと思います。

――なるほど。特にハロウィンはなぜここまで流行ったと思いますか

そもそも最近の若い人たちは、コスプレをして東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどに行く人が多いですよね。ハロウィンに限らず、コスプレをして皆で集まって写真を撮る、というような"写真映え"がトレンドとしてかなり大きくなってきている。その点では、そもそもハロウィン自体がイベントとして、若者と時代のニーズに合っており、形を変えて広がる土壌があったということです。

次に、1997年から東京ディズニーランドがハロウィンイベントを行ったことです。東京近郊の若者たちにとって東京ディズニーランドの影響は大きいので、毎年行くたびにハロウィンのムードがあると、おのずと根付いてくるものも大きいですよね。

あとは、日本の「パリピ」の子たちがハロウィンを楽しむ様子をSNSに投稿したり、外国人が海外のハロウィンの様子をSNSにアップしたりすることによって、徐々に広まったんだと思います。若者は海外離れしていると言われているけど、意外とSNSを通しての海外(主にアメリカ)の影響力というのは強くなっている。こうした3点の要素が混ざり合ったからこそ、流行ったのではないかと思いますね。

流行を"市場"にする「パリピ」

――今後、企業や国は「パリピ」とどのように向き合っていくべきだと思いますか

これまで「パリピ」が流行らせてきたレッドブルやヘッドフォン、ハロウィン、ラブホ女子会……などを金額として換算すると、かなりの経済効果があるわけですよね。今は、日本全体でも、特に若い子は消費しないといわれている。一方で、若者のなかでも「パリピ」の人に注目することで、自分の会社の商品がすごく売れるということがあり得るかもしれません。

例えば、エナジードリンクの「レッドブル」は象徴的です。日本ではもともと「栄養ドリンク」の市場が強かった。ところが、パリピの人たちが「レッドブル」をたくさん飲んだことによって、「エナジードリンク市場」というもう1つの市場ができたんですよ。このように、市場が独占されて、新たなチャンスがないと思っていた業界・サービスに携わる人たちも、ひょっとしたら「パリピ」の人たちに注目すると、新たな市場自体をつくりだす可能性があるかもしれません。

例えば、若い人の移住者を呼び込みたいと考えている自治体など。パリピの人たちを田舎に呼ぶというのは、大変なことだと思いますが、仮にクールな価値観を植えつけることができれば、「サーピー」「パンピー」の人たちにも波及していく可能性があります。人口ボリュームとしては、「パリピ」は「マイルドヤンキー」(※)と比べて少ないかもしれませんが、パリピの人たちに飛びついてもらうことを、特に困っている業界の人たち目を向けてもらえたらいいと思いますね。

※地元である郊外や地方都市に住み、幼なじみの地元友達とつるむ若者たちのこと(『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』原田曜平 著/幻冬舎新書/780円+税より)

――最後に、原田さん自身が予想する、次に「パリピ」に流行るものは何だと思いますか

イースターは、次にブームが来そうですよね。現在は市場規模6億円(2014年 富士経済)と言われており、ハロウィンの市場規模1,220億円(2015年 一般社団法人 日本記念日協会 記念文化研究所)とは大きく差がありますが、いずれ近い規模まで市場が広がっていくのではないかと思います。

あとは、女子会をする場所がどんどん変化していきますよね。最近だと、レンタルルームを借りて女子会するケースも増えているので、レンタルルーム女子会のようなものが一般的に認知されるようになるだろうし、もっと他の場所が出てくる可能性がでてくるかと思います。だからこそ、企業は今後女子会の場所として選んでもらえるように動くべきだと思います。

――ありがとうございました