――実際に推しが変化していくときのファン心理はどのような感じなのでしょうか?

藍先生「自分の中に、オタクモードの自分と女性モードの自分がいて、オタクモードの自分は変化をすごく怖がります。あの子のあの感じが好きだったのに、みたいな。言うなれば、あのポニテが好きだったのに! みたいな感じですね(笑)。でも女性としてわかる部分があって、ずっとこの髪型って言われても、いつかは切りたくなっちゃうんですよ。自分自身も、すごく濃いメイクをしたい時期があれば、まったくのスッピンで過ごしたい時期もある。それは、その時その時の心境によるものだから仕方ないと納得できる、物分りの良い大人の女性も自分の中にはいるので、その両者の折り合いをつけながら生きている感じです。嫌なんだけど、わかる! みたいな(笑)。そこを上手く活かして、オタクを説得する翻訳機みたいな存在になりたくてマンガ家をやっているので、今回の仕事は本当に良かったなって思っています。マンガなら直接言わなくても、雰囲気でわかってもらえるじゃないですか」

――先生自身の思いも詰まった作品なんですね

藍先生「今回は、最初切ったネームでOKをもらえたときが一番ほっとしました。そこで、こういう私を見せるのには抵抗がありますって言われたら、全部直すしかなかったので」

――ちなみに、能登さんにとって見せたくない自分はありますか?

能登「今はあまりないです。StylipSが始まったころは、ライブのときは強気でいかないとみんながついてこないとか、能登有沙はこうあるべきだ、みたいな勝手な解釈があって、かなり肩肘を張っていたんですけど、今回は特に自分一人のCDなので、誰に気を遣うこともなく、自分のやりたいこと、チャレンジしてみたいことを思い切りやって、その上で、自分の知らない能登有沙を引き出してもらえたらいいなと思っていました」

藍先生「けっこう自分の中でも踏み込んだところまで描いている意識があったので、これは違いますって言われたら、ゼロからやり直すしかない、くらいの覚悟でした」

能登「本当に皆さんが、すごく絶妙なラインで、ギリギリを攻めてくれた結果が今回のシングルになっているんじゃないかと思います。ジャケ写もあまりニコニコしていない、ちょっと大人な感じになっていますし、いろいろな挑戦が詰まった1枚になっています。ただ、2曲目の『超絶無敵最強スマッシュ』を聴いてもらえば、いつもの"のっち"だって安心してもらえるんじゃないでしょうか(笑)」

――いつもの"のっち"もやはり大事ですよね

能登「自分自身、いつもの"のっち"で安心してしまうのは、成長が止まってしまうみたいで嫌なんですけど、その一方で、今の自分をずっと続けられるのも、それはそれで素晴らしいことなのではないかと思っています。そういう意味では、本当に今回のシングルはすごくいいタイミングで、StylipSがありつつ、振り付けなどのクリエイティブな活動もあり、さらに自分自身の活動も大事にしているところを見せられるので、すごく良かったです」

――今回の3曲は比較的難しい、歌いにくい曲が多くないですか?

能登「中でも『超絶無敵最強スマッシュ』は超絶難しかったです(笑)。だた、私自身、けっこう頑固な部分があって、難しいと言ったら負けだみたいな気持ちがあるので、あえてハモリを二声にして厚くしたりしています。ハモリは全部自分なんですけど、有木(竜郎)さんにその場で作ってもらって、耳コピしてレコーディングして、みたいな感じで、本当に録りながら作っていった感じです」

松野P「『超絶無敵最強スマッシュ』を録った時は、その一曲だけの予定だったので、僕らも力んだところがあり、すごくたくさんの要素を詰め込んじゃったんですよ。そうしたら、全部クリアしていくので、もっといけるんじゃないか、みたいに調子に乗っちゃって(笑)。今考えると申し訳なかったです」

能登「松野さんはレコーディングの時に、もうちょっと神っぽい感じで、とか面白いディレクションをしてくれるので、すごく楽しかったですよ(笑)」

――神ですか?

能登「神です(笑)」

――無茶振りにもほどがありますね

松野P「これまでいくつかの現場を見て、声優さんの場合、イメージで語ったほうが上手くハマることが多かったので、そういうディレクションになってしまいました(笑)。『おやすみ星』は、ちょっと昔を振り返るみたいな世界観なので、昔を俯瞰で眺めるイメージを、"神っぽく"と表現した感じです」

能登「こうしたら、神に聴こえるかな? みたいな感じで歌ったんですけど、気持ち的には、お姉さんというか上に持ってくる感じ。でも、上に持っていきすぎると幼く聴こえるので、あわせて幅も広げながら歌いました。逆に『深夜あにめーしょん』は真っ直ぐ前をみながら、肩幅ぐらいの感じ。『超絶無敵最強スマッシュ』は、鋭いランスで、いろいろな方向から刺して掘ってえぐるみたいに、縦横無尽で動くみたいな感じで歌っています(笑)」

――そういう点でも、今回の3曲は面白いバランスですよね

能登「曲のバランスも面白いですし、そこにミュージックビデオが加わり、藍先生のマンガが加わることで、本当に面白い作品に仕上がったのではないかと思っています」

――それでは最後にファンの方へのメッセージをお願いします

藍先生「今回は、音楽を聴いてマンガにするという新しい試みでしたが、絵作りもこだわってますし、のっちの魅力もきっちり出せているのではないかと思いますので、ぜひマンガを読んでみてください! あと、『note』という媒体で新作のアイドル物を始める予定なので、こちらもチェックしていただけるとうれしいです」

松野P「能登さんは、本当にいろいろな魅力を持っているすばらしい方で、その魅力がいろいろな角度から詰まった作品ができたと思っています。ぜひお手にとって聴いてみてください」

能登「今回のCDは、自分の表現したい世界や色を、たくさん取り入れていただいております。新しいのっちの一面を見せたいという気持ちもありますが、聴いた人がビックリしないように、これまでののっちの要素も残しているので、肩の力を抜いて、気持よく音を楽しみながら、プラスアルファの新しいのっちを感じていただけたらうれしいです。よろしくお願いします」

――ありがとうございました

能登有沙のNEWシングル「おやすみ星」は2015年6月15日のリリース予定で、価格は1,000円。特設サイトもオープンしており、インストアライブ情報や店舗購入特典なども公開されている。また、「深夜あにめーしょん」のマンガを手掛けた藍先生の公式サイトTwitter(@ai_hanwota)もあわせてチェックしてみよう。