――それが「深夜あにめーしょん」ですね

能登「オタクな女の子が、外では気を遣っているんだけど、家では気を抜きたくて、コンビニで缶ビールを買って、深夜アニメを観ながら一息つく、みたいな感じの曲です」

松野P「それがイコール能登さんかどうかは別にして、深夜アニメを観ている本人が声優さんというのも面白いかなって思いました。能登さんは、何でもバチッと頑張るぞ! みたいなイメージが強いじゃないですか。でも、今回はそれとは違った方向性の曲にすることで、今までとは違うイメージ、大人の一面を見せられるのではないかと思いました」

――ちなみに、歌詞の世界観とはイコールですか?

能登「実際、『深夜あにめーしょん』の女の子とかなり近いところがあると思います。私の場合、缶ビールじゃなくて、缶チューハイですけどね(笑)。オンとオフの切り替えをすごくする人間なので、仕事をしているところだけを観ている方は、すごくしっかりしているねって言ってくださるんですけど、プライベートだとけっこうダラダラしています。部屋が汚かったり、わかめうどんが作りたくて、乾燥わかめとうどんを一緒にお湯にぶちこんで大変なことになったり(笑)」

――女子力なさすぎです(笑)

能登「そして、まったく気にせずにそれを食べるみたいな(笑)。深夜アニメを観たり、お風呂で一人で本を読んだりしている時間が好きで、本当はすごく不器用なんですよ。周りの人からは、もっとわがままになればいいのにってすごく言われるんですけど……」

――自分の中で、多かれ少なかれ抑えている部分があるのですか?

能登「私の中では無意識なんですよ。ハローの時代とか、もっと遡れば小学校4年のころからこの世界にいるので、周りの目を絶えず気にしないといけない環境で生きてきた結果、自然と身についた行動が、他人からはちょっと無理しているんじゃないかって思われちゃうみたいなんですよね。でも本人はまったくそんな気はないです」

――StylipSもそうですが、比較的お姉さん的ポジションを求められることが多いのも、そう思われる理由の一つかもしれませんね

能登「それもあるかもしれません」

藍先生「能登さんが、お姉さん的なポジションで頑張っている姿というのは、同性の目から見ると、すごく大変なことだろうって思えてしまう。だからこそ、可愛い子はたくさんいるけれど、その中で、何となく共感できる、一緒にお仕事してみたい、話してみたいって思えるのは能登さんなんですよ。今回、『深夜あにめーしょん』のマンガを描かせていただくことが決まったときは、そういった部分を拡げて、表現できればいいなっていう思いがありました」

――マンガの構想はかなり早い段階からできていたのですか?

藍先生「ちょっと世の中に不器用で、事務所を辞めソロになっちゃうような子を主人公にした漫画を描いているんですけど、私自身、そういう子が好きなんですよ。割りを食っちゃうタイプの子。そこにあるドラマが好きで、ファンの人も何となく苦労していることはわかっているだろうから、そこをちょっと拡げていきたいなと。そうすれば、ファンの人も何となく報われるし、本人のためにもなるんじゃないかと思いました」

――そのあたりは『深夜あにめーしょん』の世界観とも一致するところがありますね

藍先生「松野さんからDENSHI JISHIONさんの歌詞をいただいた段階で、これなら描ける! って思いました。今回のマンガは、能登有沙を主軸に置くというのが一番だったので、能登有沙を中心にしながら、歌詞のストーリーラインに出てくるエピソードを加えていくという感じで構成しています」

――歌詞の世界観に能登有沙を登場させるのではなく、能登有沙に歌詞の世界観をアドオンしていくという感じですね

藍先生「自分の描きたいものだけを描くんだったら単なるファンと変わらないじゃないですか。あくまでもプロとして描く以上、DENSHI JISHIONさんの歌詞の世界もきっちり吸い上げて、音から受ける印象も盛り込んでいくという流れで描いています」

――自分が主人公の漫画というのはいかがですか?

能登「私が想像していたよりも、私の心の中が表現されていて、すごく言いたいことなんだけど、私の口からは言えない! みたいなところをすごく拾っていただけていると思いました。実際、髪の毛を切っちゃったのも、『もう、やだ!』って思ったからなんですよ。髪の毛を伸ばしてポニーテール、というチャームポイントでやってきたんですけど、ここらで一度ショートにしてみたい、と思って」

――ちなみに髪はいつごろから伸ばしていたのですか?

能登「子供の頃からずっとです。子役は髪の毛が結べないとダメなので。そのままの状態でここまで来ちゃったので、ちょうどStylipSのシングルを出した後くらいのタイミングで思い切って切っちゃいました。切ってみたら本当に楽で、シャンプーって一回でいいんだって感動しちゃいました(笑)。実はそういった心境について、先生には話してなかったのに、マンガ上で表現されていたので、すごく驚きましたし、すごくうれしかったです」

藍先生「そういってもらえて良かったです。単なる妄想だったので(笑)。変化を前向きに描きたかったんですよ。今回、ちょっとタッチも変えて、線も均一なペンに変えて、少女漫画っぽい雰囲気、おしゃれっぽい雰囲気を出してみたんですけど、そうやって変化していく"のっち"、キラキラになっていく"のっち"をファンも受け入れざるを得ないみたいな雰囲気にして、納得させたいという狙いもありました」