――瀬戸口さんがこのドラマと通して伝えたいこととは?

0.1%にこだわる男が主人公のドラマです。事件に限らず日常生活の中でも「これくらいでいいか」と思う瞬間がありますが、そこを妥協せずに最後の0.1%まで妥協せずに積み上げていかないといけないなと、このドラマをやりながら自分自身も感じています。そうしていると、うざがられたりめんどくさいと思われがちですが、そうやって頑張った先に女神がほほ笑む瞬間もあると思うんです。この作品を見て、自分ももうちょっと頑張ってみよう、あと0.1%あきらめずにやってみようという気持ちを持ってもらえたらいいなと、裏テーマとして願っています。

――数々の名作を手掛けられてきた瀬戸口さんにとって、今回挑戦だなと思っている部分を教えてください。

エンターテインメントに徹して作ってみたらどうなるのだろうというのが、今回僕たちの中で課しているところです。自分探しをした作品もあれば、社会派と言われるものもありましたが、今回は「エンターテインメントです!」と。でも、見終わった時に、刑事事件の弁護士さんってそういうことなんだとか、僕らが取材したり本を読んだりして知った驚きが、「あぁおもしろかった」という先にちょっとだけ入っていくみたいな。そっちが前面に出るのではないという作りを目指していて、そこはありそうで今までなかったタイプのドラマだと思います。

――ガチッとした弁護士ものかと思っていましたが、エンターテインメント要素が強いんですね。

そうなんです。おもしろいシーンや遊びの部分を極力入れ込むことが大事だと思っています。そういう狙いがあり、木村ひさしさんに監督をお願いしたのですが、キャラクターの魅力を引き出すというのがすごくおもしろくて、決めゼリフのところをあえてオヤジギャグを言わせるというのも監督のアイデアなんです。普通は「倍返しだ!」みたいな決めゼリフを言うところを、ひょうひょうとした深山というキャラクター像を作っていきたいという一貫の中でアイデアを出されて。本筋はしっかりとした事件を扱っていますが、それ以外の部分でどれだけ遊びを入れていけるかが、今回の大きな挑戦であり、僕ら自身もそこを楽しんで作っています。

――オヤジギャグ、楽しみです(笑)。さて、少し広い話になりますが、4年ぶりにドラマの世界に戻られて、今のドラマ業界をどう見ていますか?

視聴形態が変わってきていると思います。現場にとっては、積み上げていく過程が大事で、結果はあとからついてくるものだと思っているというのが大前提ですが、連続ドラマは特殊で、撮影しながら動いていくので、結果が過程を凌駕する瞬間がある。多くの人に見てもらえたという反響がスタッフ・キャストの力となって励みになっていくことがあるんです。今のテレビ業界のビジネスとしては、リアルタイムの世帯視聴率で成り立っていますが、今後タイムシフト(録画視聴)も合算した到達視聴率で評価するようになるかもしれない。そうなると、作り手にとっての励みが変わったり、作り方が変わってくることも近い将来あるのかなと。最終的にどれくらいの方が見てくれたかということが物差しになった方が、作り手としては元気が出るなとは思っています。

――最後に、久しぶりのドラマ制作部でどんなことに挑戦していきたいか、目標や意気込みをお聞かせください。

今回のドラマもそうですが、一つは自分がプレーヤーとして頑張りたい。もう一つは、後輩たちを育てていきたいというのがあります。僕らももう40歳を過ぎていて、年齢を重ねたからこそできることもありますが、若い時だからこその感性で作れるものがいっぱいあると思うので、次の世代の後輩たちを引き上げてあげるというか、その楽しみを共有できたらいいなと。きっとその楽しさをまだ体験できていないメンバーもいると思うので、体験できるようにしてあげられたらと考えています。

■プロフィール
瀬戸口克陽
1973年9月9日、鹿児島県出身。1996年にTBS入社し、『GOOD LUCK!!』(2003年)、『砂の器』(2004年)、『花より男子』(2005年)、『花より男子2』(2007年)、『華麗なる一族』(2007年)など数々のヒット作、話題作をプロデュース。2012年に編成部へ異動となったが、2015年6月にドラマ制作部に戻り、『99.9-刑事専門弁護士-』は4年ぶりの連続ドラマとなる。