俳優・妻夫木聡が、石川慶氏の長編映画監督デビュー作となる『愚行録』(2017年公開)で主演を務め、女優・満島ひかりと兄妹役で再共演することが15日、明らかになった。

映画『愚行録』キャスト陣(左から、妻夫木聡、満島ひかり)と原作書影 写真:L.O.S.164 装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ

原作は、山本周五郎賞の受賞歴もある作家・貫井徳郎氏の同名ミステリー小説。1年前に起こった一家殺人事件の取材を開始した週刊誌記者・田中が、関係者の証言によって事件の背後にあった人間関係の摩擦に気付いていく様を描く。脚本を手掛けるのは、『マイ・バック・ページ』(11年)の向井康介氏。人間の秘められた羨望(せんぼう)、嫉妬と駆け引き、日常的に積み重ねられた無意識の"愚行"が複雑に絡み合う様を映し出す。

田中を演じる妻夫木は、本作を「『人間は愚かな生き物なのだ』ということにこんなにも真正面からぶつかった作品はなかなかありません」と説明。また、「愚かさを追求すること自体、愚かな行為」としつつ、「この映画に期待せずにはいられないこの思いこそ、人の業というべきものか」と作品の持つ空気感にいや応なく心が引かれてしまっていることを明かす。その上で、「この泥沼に漬かることに決めました」「足を踏み入れてはいけないとわかっていつつも僕はこの作品と一緒に前進したい」と覚悟を決め、「追い込まれて、追い込まれて出た最後の命の一滴を最後まで見つめていただければ」と呼びかけている。

さらに、女優・満島ひかりの出演も発表。田中の妹・光子役を務める。最初こそ「好んでやりたいと思う役柄ではありません」と感じたようだが、「育った環境の中で生まれてしまった独特の愛について、存在についてを、いままでと違った風に問いかけられる予感がして」参加を決意。「切ないきもちが押し寄せてきて、涙してしまうこと」があっても、「同情なんかせずに、リラックスしてやりたい」と意気込みを見せる。

2014年のドラマ『若者たち2014』(フジテレビ系)でも兄妹役を演じたほか、これまで度々共演機会のあった2人。「その都度役に全力投球してきてくれる満島ひかりという女優が僕は大好きです。全力で受け止め全力で返していければいいなと考えています」(妻夫木)、「ほんとうの兄のように慕っている妻夫木さんがいるので、とても安心です。新しい挑戦を一緒にやれる幸せも感じます」(満島)と互いに認め合いながら、本作に臨んだ。

初めて長編映画でメガホンを取る石川監督は、「複雑に入り組んだプロット、一筋縄ではいかない登場人物たち、そして全体を貫く重厚なテーマ」と本作の魅力を矢継ぎ早に挙げる。そして、「『こういう映画が見たい』と常々思っていたものが全部詰まっている作品」「規格外の映画になる予感がしています」と胸を張って語った。

(C)2016「愚行録」製作委員会