東京商工リサーチはこのほど、出版取次中堅の太洋社に連鎖した書店の倒産・休廃業調査結果を発表した。

太洋社に連鎖した倒産(判明分)

1社が倒産、16店舗が休廃業

太洋社が3月15日、東京地裁へ破産申請し同日に破産開始決定を受けた。2月5日に、自主廃業の準備に入った旨の文章を取引先へ送付していたが、売掛債権が予想以上に劣化していたため、債務全額を弁済する目途がつかなかった。2月5日時点で300法人・800店舗の書店と取引していた。

東京商工リサーチでは、2月5日以降の太洋社の一連の動きに連鎖する形で倒産や休廃業した書店を調査。3月14日までに、倒産は1社(芳林堂書店)、休廃業した書店は14社(個人企業含む)、店舗数は16店舗に及ぶことがわかった。

企業14社のうち、複数店舗を運営していたのは友朋堂書店の1社だけで、残りの13社は1店舗のみの零細事業者だった。14社のうち個人企業は9社(構成比64.2%)で半数以上を占める。

芳林堂書店の倒産で8億円の焦げ付き

2月26日に破産開始決定を受けた芳林堂書店の「破産手続申立書」には、太洋社への買掛金が12億1,111万円計上されていた。太洋社への買掛金の支払いが長期間にわたり延滞していたため、芳林堂書店の売上高規模(2015年8月期: 35億8,710万円)からすると、買掛金額は大きく膨らんでいる。太洋社によると、このうち「在庫売却による回収額を除く約8億円が焦げ付くことが確定した」という。

このため、太洋社の自主廃業に向けた動きから破産の流れは、芳林堂書店の支払い遅延が大きな要因になったとの見方もできる。

出版社の倒産は増加傾向

出版科学研究所によると2015年の出版物の販売額は1兆5,220億円で、11年連続で前年を割り込んだ。出版取次では、2015年6月に栗田出版販売が東京地裁に民事再生法の適用を申請している。

出版物販売金額

出版取次7社(日本出版販売、トーハン、大阪屋、栗田出版販売、日教販、中央社、太洋社)の2010年度(2010年4月期~2011年3月期)の単体売上高の合計は1兆3,962億円だったが、2014年度(栗田出版販売は2013年度分で算出)の売上高合計は1兆1,885億円に落ち込んでいる。また、出版社の倒産は2013年の33件を底に増加傾向をたどり、2015年は38件に達した。

2015年出版業 従業員数別倒産状況