日本情緒が色濃く残る城崎温泉。兵庫県の日本海側に位置し、都市部からのアクセスが良好とは言い難い温泉街だが、インバウンドブームに沸く日本の中でも、外国人宿泊者数が急増する注目の観光地だ。城崎温泉を擁する兵庫県・豊岡市は、外国人観光客の更なる獲得と収益化に向け、日本では馴染みのない新たな観光地経営組織を立ち上げる。同市の取り組みは、インバウンドを地方創生につなげたい地方自治体のモデルケースになるかもしれない。

城崎温泉は1300年の歴史を誇る温泉街。7カ所の「外湯めぐり」が名物で、木造三階建ての建物が軒を連ねる街を、浴衣に下駄履きで歩けば情緒たっぷりだ。こういった温泉街独特の滞在スタイルに目を付けたのが、海外の著名旅行ガイドである「ロンリープラネット」。同誌が日本の「ベスト温泉街」として城崎温泉を紹介すると、海外での知名度は一気に高まった。

外湯の1つである「一の湯」

「モノ」から「コト」に素早く対応

外国人観光客の地域別シェアを調べると、日本全体に比べ、城崎温泉は欧州、北米、豪州からの訪問が多いことが見て取れる。欧米からの旅行客を惹きつけているのは、城崎温泉が提示する温泉街ならでは時間の過ごし方だ。

城崎温泉を擁する兵庫県・豊岡市は、「モノ」から「コト」へというインバウンド消費の移り変わりにいち早く対応した地方自治体といえるだろう。温泉に入る、浴衣を着る、和室に泊まるといった行為そのものを観光資源と捉え、外国語版ホームページを用意するなど海外への情報発信にも力を入れた。こういった取り組みが、外国人宿泊客数の増加という形で実を結んでいるわけだ。

2015年の外国人宿泊者数は前年比2倍超の34,318人。2016年以降は目標値(豊岡市発表資料から作成)

日本全体に比べて、豪州、北米、欧州からの訪問が多いのが見てとれる

マーケティングが観光地経営を変える?

豊岡市は増えゆく外国人観光客を地方創生につなげようと策を練る。同市が設立を決めたのが、日本では先進的な取り組みとなる観光地経営組織「DMO(Destination Management/Marketing Organization)」だ。

DMOとは、マーケティングやブランディングといった手法を用いる観光地経営組織のこと。行政色の強い日本の観光協会に比べると立ち位置は民間企業に近い。海外では普及しているようで、世界最大級のDMO事業者団体といわれる米DMAI(Destination Marketing Association International)には、20以上の州から600を超えるDMOが参加しているという。

日本で本格的にDMOを導入するのは豊岡市が初めてとなる模様。この動きが、豊岡市の地方創生にどのような効果をもたらすのだろうか。