新組織でインバウンド需要を開拓

「観光業者、観光協会、個々の旅館などは、インバウンドにほとんど取り組んでいなかった。(外国人観光客は)結果として増えただけ」。こう語る豊岡市の中貝宗治市長は、インバウンド需要の更なる開拓に向け、DMOを観光戦略の立案拠点として運用していく考えだ。

豊岡版DMOは一般社団法人として立ち上げる。民間からは高速バス運営などを手掛けるウィラー・アライアンス、地元のバス会社である全但バス、旅行会社のジェイティービーなどが参加。代表者には中貝市長が就任するが、実質的に経営を行う専務理事には大手商社から人材の派遣を受けるという。

左から豊岡市長の中貝宗治氏、ウィラー・アライアンス代表取締役の村瀨茂高氏、全但バス代表取締役社長の桐山徹郎氏(豊岡版DMO設立発表会にて撮影)

DMOで実施するマーケティングの例としては、豊岡市で外国人向けWi-Fiサービスを運営する業者からデータを取得し、観光客の移動経路などを分析したうえで商品開発を行うケースなどが考えられるという。豊岡版DMOは、2020年の外国人宿泊者数10万人達成を目指して活動を進めていく。

地方都市でも世界を相手に仕事ができる

収益事業を行い、運営資金を自身で稼ぎ出すのがDMOの理想像。豊岡版DMOはインバウンド需要に狙いを定め、「宿泊予約サイトの運営」、「着地型ツアーの企画・販売」、「豊岡ブランド商品の販売」といった事業を実施する。

DMOで運営するのは、外国人向け宿泊予約サイトの「Visit Kinosaki」だ。旅館の情報から、浴衣の着方や温泉でのマナーといった文化的な側面までを紹介するウェブサイトで、表示言語は英語とフランス語の2種類から選べる。同サイトを作成したのは豊岡市だが、市は旅行業の資格を持たないため、運営は民間企業に委託していた。豊岡版DMOは旅行業の資格取得後に同サイトの運営を引き継ぐ。

一度は日本の空から姿を消したコウノトリの野生復帰を目指す

着地型ツアーとは、旅行者を受け入れる側の地域が企画・運営する旅行商品のこと。都市部の旅行会社が企画する「発地型ツアー」と比べ、地元ならではの観光資源や体験をプログラムに組み込めるのが特徴だ。

豊岡ブランドで外国人向けの販売が伸びそうなのは、同市のブランド米である「コウノトリ育むお米」や特産品の鞄など。世界的な絶滅危惧種であるコウノトリの保護・育成に力を入れる豊岡市では、コウノトリが住みやすい環境づくりの一環として水田の整備に取り組んでいるが、この水田で取れる無農薬・減農薬の米が特産品となっている。豊岡市はイタリアとシンガポールで試験販売を行うなど米の輸出拡大に注力しており、DMOでも米を売り出す可能性がありそうだ。

DMOが拓く小さな世界都市への道

中貝市長は「(豊岡版DMOに)ウィラーが入ったのは大きい。売ることのプロだから」と語り、同社が保有するマーケティング関連のノウハウに期待を示した。では、DMOの成功はいかにして地方創生につながるのか。キーワードは雇用創出だ。

豊岡市が目指す地方都市としての姿は「小さな世界都市」。住みやすい地方都市で暮らしつつ、世界とつながる仕事に従事できる環境を作り出そうというのが同市の目標だ。DMOが軌道に乗れば、外国人観光客に対応する仕事や、海外向けに地域産品を売り込むという仕事が増加し、魅力的な雇用の創出につながるというのが中貝市長の考えだ。

DMOの登場により、観光地の雇用形態が変化する可能性もある。繁忙期に一時的に増えるのが通例だった派遣労働者が、通年雇用の職を得るチャンスが生まれるかもしれないのだ。