おでんにもつ煮、肉じゃがなど、地味ながらもファンが多いこんにゃく。メインとして調理される機会は少ないものの、その"ぷにぷに"とした食感はなかなか個性的で存在感がある。低カロリーで食物繊維を豊富に含むなど、食感以外にも特筆すべきところがあるのだが、国内での消費量は減る一方。生産者たちはどのようにして起死回生を図るのか。

料理のメインをはることは少ないこんにゃく(写真:PIXTA)

現在のこんにゃく事情

こんにゃくがどのようにしてできるかご存知だろうか。まずは、かぼちゃのような見た目のこんにゃくいもを薄切りにして乾燥させ、細かく砕いて粉にする。それぞれ、薄切りにして乾燥させたものは荒粉、細かく砕いたものは精粉と呼ぶ。精粉に水と凝固剤(水酸化カルシウム)を加えて整形すれば、一般的なこんにゃくの完成だ。

こんにゃくいも(写真は模型)。ずんぐりとした見た目だ。収穫には3年かかる

こんにゃくいもの産地はほとんどが群馬県。2014年においては栽培面積の約85%、収穫量の約92%を群馬県が占めており、圧倒的なシェアを誇っている。

農産物というと、TPP(環太平洋パートナーシップ)協定の影響が心配されそうだが、農林水産省はこんにゃくいもについて「TPP合意による特段の影響は見込み難い」と説明。その根拠として、こんにゃくいもは関税割当制(※)を維持していること、また関税撤廃は免れたこと、こんにゃく製品(加工済みのもの)はTPP参加国からの輸入実績がほとんどないことを挙げている。
※関税割当制:一定数量以内の輸入品については無税もしくは低税率の関税を適用し、一定数量を超える輸入分については高税率の関税を適用する制度。安価な輸入品を提供できるとともに、国内の生産者も保護する。

とはいえ、現場の生産者たちは危機感を持っている。群馬県のとあるこんにゃくいも農家兼加工者は「アジア諸国はこんにゃくへの関心が高い。TPP参加国のベトナムもこんにゃくいもの栽培に本腰を入れれば、強力なライバルになりそうだ」と語る。

東京都中央区にある群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」店頭にて。玉こんにゃくとさしみこんにゃくを配る群馬県のこんにゃくいも農家の方々

ライバルが増えるだけではない。総務省の「家計調査年報」によれば、1世帯あたりのこんにゃく製品年間購入金額は落ち込み続けている。2014年には、1985年の4,161円の半分以下となる2,000円程度となった。こんにゃくが食卓に顔を見せなくなっているというのは、筆者の肌感覚としてもわかる。イタリアンやフレンチ、中華など、和食以外の多彩な料理を気軽に楽しめるようになったなかで、こんにゃくはその鳴りを潜めている。