小中学生むけの少女漫画雑誌はいくつか存在するが、1977年発行と、後発でありながら現在最も発行部数が多いのが小学館『ちゃお』。2002年には100万部を超え、雑誌の発行部数が全体的に落ちている中でも、1位をキープし続けている。2002年に小学生だった読者はちょうどいまの新入社員くらい。つまり、これから入ってくる新人女性は『元ちゃおっ娘たち』が多いということになる。一体どうして『ちゃお』がこれほど人気となっていたのか。その秘密を探るべく、ちゃお編集部の方に伺った。

小学館 ちゃお編集部 植田優生紀さん

新規読者は3%

植田さんは2006年に入社、最初は学年誌の担当になり、6年目になって、自分から希望して「ちゃお」編集部に異動したという。

「本数は月に寄って変わってきますが、連載をいくつか担当しているほか、付録についても責任を持っています。最初に経験した学年誌と、今担当している『ちゃお』に共通しているのは、キャラクターものが多いことと、付録に力を入れていることでしょうか。前の部署での経験が今に活きていると思います」と植田さん。

恋愛や友情、ファンタジーなど、少女漫画に欠かせない要素に加え、たまごっち、ポケットモンスター、アイカツ! など、読者層に人気のキャラクターを多く抱えていたことが『ちゃお』が飛躍するきっかけになった。現在のコア層は10歳~12歳。特に11歳、小学5年生が主な読者だ。

植田さん「毎月の新規読者は3%。ということは、97%がリピーターということになります。この層を持続させることがとても大事になってきますね」

そこで大きな要因となっているのが、植田さんが担当している付録の領域だ。

読者とはテンション合戦

そもそも漫画誌の付録には規制があり、基本的には紙のものしか扱ってはいけなかった。日本雑誌協会がその規制を緩和したのが2001年のこと。確かに、昔の少女漫画誌の付録といえば、シールやレターセット、トランプなどが思い浮かぶ。現在の『ちゃお』では、ネイルセットや、ライトボックス(トレース台)までついている「漫画道具セット」(2015年4月号)など豪華! 最新の2016年1月号では、ATM型貯金箱がついてくると、少女だけでなくネットの大人の間でも話題となった。

2016年1月号では、ATM型貯金箱

植田さんが実際に付録について大切にしているのは、「親に買ってもらえないもの」を企画することだという。学校で使うような実用的なものは、わざわざ付録にしなくても親が買い与えてくれる。小学生女子が「ほしい」と思うけれど、親には買ってもらえないものが、一番心に響く。

更に、『ちゃお』を作る上で大切にしているのが「かわいい」こと。「地味は一番の敵です!!(笑)」と語る。

植田さん「テンションが低いものが一番だめです。『大人テイストでオシャレに』などと考えてしまいそうですが、それはNG。ちゃおっ娘は心も身体も急速に成長している時期にあって、いろんなことをすごい勢いで吸収しています。その元気の良さに追いつかなければ。もう、テンション合戦ですね(笑)」

1万人が集まる「ちゃおサマーフェスティバル」などのイベントやモニター調査など、実際に読者と接する機会は定期的に設けていると植田さん。周りの人から「最近の子供はすごいんでしょう? みんな彼氏がいたり、ブランド服を着てたり……」と言われる機会も多いとか。

植田さん「ほんとに子供を見てる? と思います。大人がイメージするような、"最近の子供"なんてそんなにいないし、みんながみんなオシャレなわけじゃない。私達が子供のときと、そんなに変わりはありません。でも、実際にちゃおっ娘たちに会わないと、そういったことを忘れて勝手な読者像をつくってしまいます。小学生のときは冷めてもいなくて、自分もアイドルになりたい、お洒落になりたい、とあこがれをパワーにすることができた。そういう気持ちを忘れてはいけません」