日本航空では、日常の運航から自然災害など予測不能な状況まで、日々仕事で数々の重要な"判断"をこなす、ミッション・ディレクターという仕事があるという。そこで今回は、仕事上での判断力を学ぶべく、ミッション・ディレクター兼オペレーションコントロールセンター部長 甲斐 莊一氏にお話を伺った。

ミッション・ディレクター兼オペレーションコントロールセンター部長 甲斐 莊一氏

優先順位をつけることで、最善な"判断"に?

――判断は難しいことだと思いますが、気をつけていることがあれば教えてください

大切なのは、優先順位を決めることです。弊社であれば、お客様・社員・機体すべての安全が第一です。その順位をクリアしている上で、どうすればお客様に一番ご納得いただけるかを考えています。サービス面はもちろん、「定時性」なども考慮します。お客様が求めている大きな一つは、定刻通りに出発・到着することですから。

――判断に迷うときはありますか

もちろんありますよ。例えば、大分空港へ運航予定のはずが悪天候の影響で羽田空港に戻る、または、福岡空港に着陸するかを判断することになったとします。その場合、羽田空港もしくは福岡空港到着後、お客さまにどのような案内をするのか、先の先まで考えて判断しなければなりません。飛行を止めるかどうかの判断は機長ならびに運航管理者、機材に関しての判断は機材担当から上がってくるので、各担当の判断を考慮して、最終的な判断を下します。

――判断に迷っているときに、何か大切なことはありますか

その場で判断するのは自分しかいないので、腹をくくって行います。ただ、他の人から聞かれた時には、判断理由を明確に答えられなければなりません。

――なんとなくでしか答えられないというのは……

ありえないですね。色々な視点から考えて、会社として最適な手段がこう、その理由はこうと、きちんと言えなければ、判断しているとは言えないのではないでしょうか。なんとなくで指示を出して、次に似たようなケースがあった場合に、以前と違う判断をくだすと、信用も失ってしまいます。

――「人によって対応を変えているのでは」「判断が信用できない」と思われることもあるかもしれないですが、そういうことに陥らないためには?

相手によって判断がブレるようなことはないと思います。やむを得ず、フライトを欠航しなければならない場合もありますが、その際も、きちんと判断基準を伝えていれば、信頼を得ることができるでしょう。