冴羽りょうを演じる上川隆也の役作りに絶賛が集まるなど、何かと話題のドラマ『エンジェル・ハート』。上川のほか、相武紗季、高島礼子、ブラザートム、ミッキー・カーチス、竜雷太など重厚なメンバーが顔をそろえる中、とびきりフレッシュな風を吹き込んでいるのがヒロイン・香瑩(シャンイン)役に抜てきされた三吉彩花だ。

経験十分な俳優たちの中でも存在感は抜群。「暗殺者として育てられたため、心を閉ざしているが、冴羽らと過ごす中で人間らしさを取り戻す」という難役を好演している。19歳にして早くも主役級の輝きを放ちはじめた三吉の魅力はどこにあるのか? これまでの足取りを振り返るとともに、今後の可能性を考えていく。

「包帯ぐるぐる巻きの美少女」を熱演

女優の三吉彩花

三吉は小学3年生のときにスカウトされて芸能界入り。「さくら学院」でのアイドル、『ニコ☆プチ』『セブンティーン』でのモデル、さらに「TSUBAKI」「ガスト」「なっちゃん」などのCM出演、そして女優業に励んできた。

女優として最初にその名が広まったのは、2010年のドラマ『熱海の捜査官』(テレビ朝日系)。最後まで物語のカギを握る"包帯ぐるぐる巻きの美少女"役を演じ、主演のオダギリジョーと何度となく演技を交わした。次に印象深いのは、2011年のドラマ『高校生レストラン』(日本テレビ系)。川島海荷や能年玲奈などの若手女優がそろう中、色白の美少女ぶりは際立ち、「あの子は誰?」と話題になった。

さらに、2012年のドラマ『結婚しない』(フジテレビ系)では、ヒロインが店長を務める花屋のアルバイト女子大生役で、「思いを寄せる同級生役の東出昌大に告白する」という初々しい演技を披露。さらに映画『グッモーエビアン!』では、未婚の母に振り回される娘役で、複数の映画新人賞を獲得した。

そして2014年には、ドラマ『ロストデイズ』『GTO』(ともにフジテレビ系)のメインキャストに抜てきされるなど、一気に飛躍。前者では意地悪な振る舞いで最後は死んでしまう女子大生役を、後者では教師と恋仲になったが、破局に追い込まれて自殺を決意する女子高生役を演じた。

群を抜く落ち着きと芯の強さ

私が三吉に初めてインタビューをしたのは3年前。彼女が16歳のときだったが、当時のことをよく覚えている。その視線はまっすぐで鋭かったし、どの質問にもこちらをしっかり見て冷静に言葉を返してくれた。また、すでに「さくら学院」を卒業していたものの、「アイドル出身の女優として見られる」ことの悔しさを隠そうとしなかったのも、今思えば、いかにも芯の強い三吉らしい。

三吉はさまざまなインタビューで、「いろいろな役が演じられるように、黒髪を染めたことはありません」と公言しているが、それも小学生時代から培われたプロ意識の表れだろう。女優はもちろんモデルやタレントとしても、納得のいかないところは絶対に妥協せず、議論や頭を下げることをいとわないのだ。この姿勢が着実な成長につながっているのは間違いなく、「自分のスタンスを貫く」という意味では、若手女優のなかで出色の存在と言える。

そんな落ち着きと芯の強さは、『メレンゲの気持ち』(日本テレビ系)でもハッキリ。昨年10月のMC就任当初こそ、硬い表情と空回りが目立ったものの、ほどなく順応。今ではベテランタレントへやや失礼な発言をしたり、全くトークに絡まず笑っているだけだったり、見ているこちらが「そんなことして大丈夫?」と感じるほど、自然体の姿を見せている。

「美しさと強さを併せ持つ」刑事役を

『エンジェル・ハート』を見ていて感心するのは、三吉のアクションシーン。ダンスで鍛えた体さばきはしなやかで力強く、艶やかな黒髪、まっすぐな眼差し、171㎝の長身と長い手足などのビジュアルもあって、走ったり、銃を構えたりするだけで絵になるのだ。21歳の清野菜名、24歳の武田梨奈、20歳の土屋太鳳ら、このところアクションに長けた若手女優が台頭しているだけに、共演が見てみたい気がする。

すでに「カッコイイ女性」としてのイメージが定着しつつあるだけに、今後期待したい役は、「美しさと強さを併せ持つ」ヒロイン。たとえば、『ストロベリーナイト』(フジエレビ)で竹内結子が演じた姫川玲子、『アンフェア』(フジテレビ系)で篠原涼子が演じた雪平夏見のような刑事役を演じられるのではないか。あるいは、上戸彩が10代のときに演じた映画『あずみ』のような時代アクションのヒロインも似合うかもしれない。

これまで三吉が演じてきたのは学生の役がほとんどだったが、『エンジェル・ハート』をきっかけに5歳、10歳……と、どんどん年上の役を演じてほしいと思う。その存在感を考えると、軽い役ではもったいない気がするのだ。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。