宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月27日、スウェーデン・エスレンジ実験場において現地時間7月24日に実施した低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト第2フェーズ試験(D-SEND#2)で計測したソニックブーム波形を解析した結果、全機低ソニックブーム設計技術を世界で初めて飛行実証したことを発表した。

低ソニックブーム設計概念実証(D-SEND)プロジェクトの概要

ソニックブームとは超音速機から発生する衝撃波が地上で衝撃音として感じられる現象で、次世代超音速旅客機を実現する上でソニックブームを解決することは、重要な課題とされている。JAXAは研究開発を通じてJAXA独自のソニックブーム低減技術(低ソニックブーム設計概念と形状設計法)を構築し、その実現性を今回の飛行試験で実証すると共にソニックブームの国際基準策定に貢献可能な技術やデータを獲得した。

低ソニックブーム設計概念実証プロジェクト第1フェーズ試験(D-SEND#1)は2011年5月に実施。2種類の軸対称体を落下させ、空中でのソニックブーム計測システム(BMS)の確立と先端部の低ソニックブーム効果の実証した。

D-SEND#2の試験状況

今回のD-SEND#2では、低ソニックブーム設計概念を適用した超音速試験機を飛行させ、計測したソニックブームによって設計概念を実証。現地時間7月24日に飛行試験を実施し、04:43に放球、10:00に高度1,000mの気球から超音速試験機が分離された。試験機は正常に飛行し、実験場内に安全に着地した。分離高度は30.5km、計測時の速度はマッハ1.39、計測時の経路角は47.5度となった。この高度750mにおけるソニックブーム計測の結果、低減していることが確認された。

ソニックブーム計測結果(高度750m)。青い線は、飛行目標としたブーム計測点の高度750mで計測された低ソニックブーム波形で、波形の振幅は比較用のN型のソニックブーム波形(赤)と比べて低減していることが分かる

また、計測したデータには当初想定し得なかった大気乱流(※)の影響が含まれていたため、JAXAは新たに解析ツールを開発し、詳細なデータ解析を行った。これまで大気乱流が低ソニックブーム波形に与える影響を解析した例はなく、今回の解析は世界初になるという。

機体が安定した飛行状態で先端および後端のソニックブームを同時に低減することを実証した例は、世界でも初めてとなる。仮に今回の結果をコンコルドに適用した場合、ソニックブームはおよそ1/2に低減可能となり、さらに50人規模の小型超音速旅客機に適用した場合には、コンコルドの1/4に低減可能となる。

今後は、国際民間航空機関(ICAO)に試験結果の報告を行うことにより、ソニックブームに関する国際基準策定に向けた技術的な議論・検討を加速させ、将来の超音速旅客機の実現につながる活動を産業界とともに積極的に推進していくという。

※大気乱流とは、地表から高度数km程度の範囲で発生する気流の乱れやゆらぎのこと。特に地表面がビルや森林など凹凸があるような場所で発生しやすく、また、大気の気温と地表面の温度の差が大きくなる日中の方が夜間よりも大きくなりやすい