香港の夏の風物詩といえば月餅。日本のお中元商戦と同じように毎年アツくヒートしている。さまざまな変わり種が登場するだけでなく、スターバックスやハーゲンダッツなどの外国企業も商戦に参加。なんだか魅力的な商品が展開されているのだ。

空港の免税店でも月餅祭り。大箱のラインナップが多いため、大量買いになってしまうことも……

月餅は今日、塩味のものも!?

月餅とは本来、薄い皮の中に餡、ドライフルーツやナッツ類、そして塩漬けの卵の黄身なんかがぎっちぎちに詰まっているお菓子で、持ってみるとずしっとした重量感がある。ひとりで1個食べるとかなり食べ甲斐があり、カロリーも高そうだ。

形は丸と決まっており、それはもちろん月餅を満月に見立てていること、そして家族円満であるように、との想いをこめてのことなのだ。だから丸けりゃなんでもいい! とばかりに、ここ数年ではさまざまな味の月餅が売られるようになった。甘いモノが苦手な人のために塩味のものすら売られているという。

「仲秋の名月」の側に月餅を

そんな中国土産の定番ともいえる月餅だが、「えっ、月餅っていつでも買えるんじゃないの!? 」と思った人もいるだろう。実はそうではないのだ。中国には日本のお中元のように、季節のあいさつがてらお世話になった人に贈答品を送る風習があり、その贈答品が月餅なのだという。

日本のお中元が道教の中元の季節(=7月15日)に神を祀る風習と仏教の盂蘭盆会(これも旧暦の7月15日)が混同されてできたものであるのに対し、中国の月餅は中秋節(=陰暦の8月15日、2015年は9月27日)を祝うためのもの。つまり、「仲秋の名月」を愛でながら食べるためのものだから、送るのは中秋節の1カ月以上前から、そのため月餅が市場に出回るのは7月、8月の夏限定なのだ。

デパ地下はいろいろな種類の月餅が勢ぞろい。1箱4,000円くらいから

この季節、香港のデパートやスーパー、ケーキ屋さんなどに行くとどこでも商品は月餅づくし。きれいな箱に入った月餅が山のように積まれている。お世話になった人に贈る品で、会社同士のやりとりも多いところは日本のお中元と似ているが、中身は月餅のみなのである。

食べてみたい! スタバの月餅

このところ日本では、若者のお中元離れが深刻だというニュースをよく目にするが、中華圏の月餅も同じなのか、若者向けのものも多数登場している。その中で一番気になるものといえば、スターバックスの月餅だ。「コーヒーによく合う4つのフレーバー」が香港とマカオ限定で売られている。

スタバの月餅は箱もシック。おしゃれな手土産にぴったり

内容はもちっとした食感が楽しめる「塩キャラメル餅&チョコレート」、スタバのシグネチャーメニューのグリーンティーを用いた「抹茶餅&小豆」、スタバのエスプレッソとの相性は抜群の「エスプレッソ&アーモンド」、そしてアジアンテイストの「ほうじ茶&金木犀」。

値段は購入する数、そして時期によって違うのが季節商品らしい。デパートなどで売られている月餅はひと箱が8個入りとか12個入りなのでおのずと大量購入になるが、スタバの月餅は4個入り。ギフトセットは4個入りが2箱付いてくるので(トールサイズのドリンク券2枚付き)結局は8個の月餅を買うことになるのだが、2箱に分かれているので旅行者の場合はお土産にしたりもできそうだ。

スタバの月餅の料金表。早目に、そしてたくさん買うと安くなる。500箱以上買う人とかいるのだろうか……

なによりも、同じ味ばかりでないところがいい。値段も8月31日以降は288香港ドル(約4,460円)。自分用に買って楽しむのもいいだろうけれど、もちろん中秋節以降は店舗から姿が消える。これを買いたいなら今しかないのだ。ちなみに、空港店でも取り扱いがある。

ハーゲンダッツは高級感たっぷり

続いて気になるのはハーゲンダッツ。こちらもかなり前から月餅商戦に参加している。ハーゲンダッツだから、もちろん月餅は全てアイスクリーム。というか、アイスクリームを月餅型にしただけのものだが、かなり高級感があり、ついでに言えばお値段も「おっと……」と思わず商品に伸ばした手が止まる。4個入りのスタンダード価格が308香港ドル(約4,770円)と、「自分用に♪」なんて気軽に言えない金額である。

一般的な月餅の場合、クリスマスケーキのように当日を過ぎてからは値段が激安になってたたき売りされたりするのだが、月餅に関しては近年、値段が暴落しないよう中秋節よりも前に販売をやめて店舗に残った商品を回収することもあるのだそう。スタバやハーゲンダッツのような"シャレオツ系"はたたき売りなんてしないだろうから、早めに購入するのが得策だ。

ハーゲンダッツの月餅。おしゃれさは疑いようはなく、そしてもちろんアイスクリームだ

贈る側のセンスが問われる

こういった商品は若者向けなのではないか、と思われるがこの金額である。若者にそんなにウケているのだろうかと思い、20~30代の、日本で言えば"お中元離れが激しい若者"に話を聞いてみた。すると意外や、「一般的には会社とか仕事関連でのやりとりが多いものの、個人的には家族に贈ったりする」という答えが返ってきた。しかも、「贈るのは普通の伝統的な月餅」とのことで、月餅の需要が高いことを教えてくれた。

とはいえ、月餅は贈る側のセンスや心配りを測ることができるものであるため、おしゃれでなくてはならない業界の人などは目新しくおしゃれなものを選ぶ傾向にあるのである。この季節ならではのお楽しみ。香港オリジナルのものも多いので、月餅めぐりも面白そうだ。

※1香港ドル=15.5円で換算。記事中の価格・情報は2015年8月取材時のもの